薬のおカネを議論しよう
「iPS細胞シート」不確かな実力と安全性
第115回
医療ガバナンス研究所医師 尾崎章彦
2024年6月15日号
24年5月24日、世界で初めてiPS細胞由来の医薬品が申請されるという〝スクープ〟記事が、日経新聞に掲載された。大阪大学発のベンチャー企業「クオリプス」が開発した、虚血性心疾患を原因とする重症心不全のiPS細胞由来心筋シート(以下、iPS細胞シート)だ。6月にも厚生労働省に製造販売承認を申請するという。
ただ、今回の承認は正規の承認ではなく、「条件及び期限付き承認制度」を利用するようだ。筆者は暗澹たる気持ちとなった。この制度は、効能や安全性よりも経済的利益を優先しているとして、『ネイチャー』誌が繰り返し批判してきたものだからだ。
いわゆる心筋シートを臨床応用しようとする研究は、大阪大学の澤芳樹氏が00年代から続けてきたものだ。iPS細胞シート以前にも、15年にはテルモが、患者の骨格筋芽細胞から細胞シートを作製し、心不全に陥った心臓...
24年5月24日、世界で初めてiPS細胞由来の医薬品が申請されるという〝スクープ〟記事が、日経新聞に掲載された。大阪大学発のベンチャー企業「クオリプス」が開発した、虚血性心疾患を原因とする重症心不全のiPS細胞由来心筋シート(以下、iPS細胞シート)だ。6月にも厚生労働省に製造販売承認を申請するという。
ただ、今回の承認は正規の承認ではなく、「条件及び期限付き承認制度」を利用するようだ。筆者は暗澹たる気持ちとなった。この制度は、効能や安全性よりも経済的利益を優先しているとして、『ネイチャー』誌が繰り返し批判してきたものだからだ。
いわゆる心筋シートを臨床応用しようとする研究は、大阪大学の澤芳樹氏が00年代から続けてきたものだ。iPS細胞シート以前にも、15年にはテルモが、患者の骨格筋芽細胞から細胞シートを作製し、心不全に陥った心臓表面
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