現場が望む社会保障制度
訪問介護の基本報酬がカットされたワケは?
第111回
ニッセイ基礎研究所主任研究員 三原 岳
2024年8月1日号
6月までに段階的に始まった介護報酬の新たな体系では、訪問介護の基本報酬が2%程度引き下げられた。恒常的な人手不足に陥っている介護業界でも訪問介護の人材不足はとくに深刻であり、この決定には現場や業界団体から不満の声が上がっている。引き下げに関する厚生労働省の説明も合理的とは言えず、筆者は「牽強付会」の印象さえ受けている。
そこで今回は訪問介護の報酬引き下げの背景を読み解く。具体的には、今回の決定や厚労省の説明を概観しつつ、「なぜ処遇改善の幅を抑える代わりに、基本報酬を維持できなかったのか」という問いを立てることで、厚労省の説明が合理的ではない点を明らかにする。
そのうえで、引き下げの理由として予算編成時の決着が影響した可能性を論じる。なお、引き下げの背景に関する考察は私見であり、状況証拠を積み上げているに過ぎない...
6月までに段階的に始まった介護報酬の新たな体系では、訪問介護の基本報酬が2%程度引き下げられた。恒常的な人手不足に陥っている介護業界でも訪問介護の人材不足はとくに深刻であり、この決定には現場や業界団体から不満の声が上がっている。引き下げに関する厚生労働省の説明も合理的とは言えず、筆者は「牽強付会」の印象さえ受けている。
そこで今回は訪問介護の報酬引き下げの背景を読み解く。具体的には、今回の決定や厚労省の説明を概観しつつ、「なぜ処遇改善の幅を抑える代わりに、基本報酬を維持できなかったのか」という問いを立てることで、厚労省の説明が合理的ではない点を明らかにする。
そのうえで、引き下げの理由として予算編成時の決着が影響した可能性を論じる。なお、引き下げの背景に関する考察は私見であり、状況証拠を積み上げているに過ぎない点は
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