SL機関車の置かれたJR新橋駅前広場は、サラリーマンに街頭インタビューする定番の場所ですが、反対側のエリアに社会貢献の一環として企業が運営しているパナソニック汐留美術館は、知らないと見過ごしてしまうビルの4階にあります。今『分離派建築会100年展 建築は芸術か?』(12月15日まで)が開催中です。



「我々は起つ」で始まる声明文を掲げる若き建築家たちがタイトルにある〝建築は芸術か?〟という論争が交わしていたときの熱い想いが垣間見られる展覧会です。この〝分離派〟という言葉はウィーン新しい芸術家たちの活動でしか聞いたことがなかったので、日本で「分離派建築会作品展」と銘打って第7回まで開催していたことを初めて知りました。積極的に西洋のさまざまな事を吸収しに渡航し、旧式の価値観を打破しようとする若者たちの起こした運動でした。いつの時代にもいろいろな分野でこうした表現者が現れ、世の中に変革をもたらすのだなとつくづく思いました。彼らの思考、行動力は大きなエネルギーを孕んでいたのですね


 展示内容は絵画展とは違って図面とか模型が主ですが、この時代にこんな試みがあったのかとわかりましたし、会場の外でも上映される紹介ビデオに映し出される関東大震災後の浅草の壊れた凌雲閣などの映像も見ることができました。


 もうひとつ、これもまったく知らなかったのですが、第一次大戦終結を祝って催された「平和記念東京博覧会」というイベントが大正11年にあり、その会場図や建物の設計図や写真の展示がされていたのですが、場所が上野の不忍池周辺だったと気がついたときは驚きました。ちょっと信じられないくらいたくさんのいわゆるパビリオンや塔があり、5ヵ月弱の期間に約1100万人という空前の来場者数だったそうです。


 それにしても前回紹介した三菱一号館美術館の展示といい、今まで意識したことのない〝大正〟という短命な時代が急に主張してきた気がします。そういえばスペイン風邪もこの頃ですが、とんでもない符合は早くなくなってほしいものです。


 美術館の隣には鉄道歴史展示室というギャラリーがあり、2021年2月7日まで『走るレストラン〜食堂車の物語〜』を開催しています。ここは旧新橋停車場駅舎で、大河ドラマ『八重の桜』のロケでも出てきましたが、現代的なビルの谷間にひっそりとある明治の建物(復元)です。



 その横の敷地では、辺りが暗くなると音楽とともにちょっとしたイルミネーションショーが始まって、線のオブジェが蒸気機関車から新幹線へ変貌するのを楽しむことができます。