次の一万札の顔になる渋沢栄一を知ったのは映画『帝都物語』(1988)で、このとき彼を演じていたのは勝新太郎でした。帝都・東京を影から操る怪しく、恐ろしげな人物というイメージが残っています。でも、2021年の大河ドラマで演じるのは勝新とは真逆なイメージの吉沢亮。どんな渋沢像になるのでしょう。


 ところで、実際はどちらも本人とは風貌がまったく違うので、実在した渋沢栄一を手っ取り早く知るには飛鳥山へ行くのがおすすめです。
江戸時代将軍の指示のもと桜が植えられ、花見の名所になったJR王子駅からすぐの飛鳥山は、もちろん桜も気になりますが、ここに残る渋沢史料館と現存する建物が目的で行ったことがあります。


 渋沢が別邸を建て、その後広い庭園に洋館、茶室、文庫などを建設しました。しかし、空襲でほとんど焼失し、残ったのは青淵文庫の一部と晩香廬だけですが古い建物好きには見逃せません。実際に目にすると失われた建物もきっと素晴らしいものだったに違いないと思え、焼けてしまったのは本当に残念です。



 さて、渋沢史料館で彼の生涯や業績について詳しく知ることができます。映画とは違う意味でとんでもない人物だったのがわかり、その生涯を1年をかけてドラマで見られるのは楽しみです。


 ここには他に博物館が2つあります。まずひとつ目の北区飛鳥山博物館はまったく期待せず入ったのですが、なかなかどうして、かなり見応えがありました。もうひとつの紙の博物館はもちろん渋沢が創立した抄紙会社(後の王子製紙)が王子に創られ、日本の洋紙発祥の地ということで開設されたわけですが、〝紙〟の歴史や種類などがよくわかってすごく勉強になりました。和紙はどこも同じだと思っていましたが、江戸時代にそれぞれの藩で開発して、特産品としていたことを知りませんでした。今も残る越後和紙や美濃和紙など、各地で工夫して藩の財政を豊かにする一翼となってわけです。訪れたとき『金唐紙展』というのが開催されていて、気になっていた製法だったので思わず小冊子を購入してしまいました。



 飛鳥山での心残りは、〝あすかパークレール〟が動いていなかったこと。次はぜひ桜の季節に乗ってみたいです。
最新情報によると大河ドラマに合わせ、期間限定で北区飛鳥山博物館が「渋沢×北区 青天を衝け 大河ドラマ館」になるとのこと。混みそうですが気になります。