広重や北斎の浮世絵と言われる木版画とはずいぶん趣きの異なる「新版画」が最近人気なようで、今月から始まった東京都美術館の『没後70年 吉田博展』(3/28まで)には、思いのほか若い人たちも訪れていました。


 明治・大正時代の日本はとにかく西洋に追いつけと日本の伝統を顧みず、いろいろなものが破壊され衰退していったなか、写真より迫力のある誌面のために使われる版画絵は、以前紹介した最後の浮世絵師と言われる月岡芳年などが人気を博したあと衰退していくわけですが、伝統的な絵師・彫師・摺師が組んでかたちで、しかも日本画や西洋画の要素をそこに入れて制作したのが「新版画」のようです。


 2015年に日本橋高島屋で川瀬巴水を、そして2019年に太田記念美術館で小原古邨を観た時にその超絶技巧に衝撃を受けました。なので今回の吉田博展は告知のチラシを手にしたときから絶対に行こうと決めていて、有難いことに事前予約制ではないので、早々に前売券を購入しました。ただ紙チケットはもらえないので手帳に貼ることができないのがちょっと残念です。



 さて、このチラシの美しい色合いだけでも楽しみだったのですが、点数が多くて驚きました。約200点のうち前期と後期で47点の入れ替えがあります。版画とは思えない大きな作品がいくつもあり、初期に描いた水彩画や油絵に実際使われた板木、スケッチ帖も展示されていました。天賦の才があった彼の画家としての人生は田中一村とは違って成功を収めたようですが、厳しい時代の流れに巻き込まれても負けずにいたことや若いときの勢いや当時の日本画壇の重鎮・黒田清輝と対立したこと、生涯で5回も海外へ行ったとか、一流の登山家でもあったことなどが最後の映像コーナーで紹介されています。実に見どころ満載な画家だったのがよくわかりました。開室時間は金・土曜日の延長はなく9:30〜17:00です。とても2時間ではまわりきれないと思うので時間に余裕を持っていかれることをお勧めします。


 同時期に活躍した笠松紫浪の作品を『没後30年記念 笠松紫浪 ―最後の新版画』として太田記念美術館で3/28まで観ることができます。前期と後期で全点展示替えだそうですが展示点数は約130点点(半券提示で2回目は割引きあり)。まだ先ですが、川瀬巴水の展覧会が平塚市美術館(4月)、SOMPO美術館(10月)にあります。



 今注目の「新版画」を一度ご覧になられてはいかがでしょう?