かつて戦場であり、文明開化で西洋文化が押し寄せて、一大娯楽空間になった上野恩賜公園。『分離派建築会100年展 建築は芸術か?』で「平和記念東京博覧会」の絵を見て、一種のテーマパークだったのだなぁと改めて思い、いつも決まったところにしか行ってなかったので、ここを全部回ってみました。


 公園になる前、徳川家光が江戸城を守るために鬼門を封じるこの地に東叡山寛永寺を建立し、幕末には彰義隊と官軍の戦場で多くの若者の血が流れたとはとても想像できないですが、杉浦日向子の漫画を実写映画化した『合葬』(2015)で時代に翻弄される彰義隊の3人の若者の物語を観たとき、確かにここで血生臭い戦いが繰り広げられたのだなと思いました。今回西郷隆盛の銅像の後ろにある彰義隊の墓を初めて見ました。そんな過去もあったのが信じられないくらい今は平穏な時代なのに、昨年からコロナ禍で以前のような花見もままならなくなるとは思ってもいませんでした。


 ところで公園内にはいくつか銅像があるのはご存知だと思います。野口英世像に気がついたのは数年前です。よく通るところにある大きい全身像なのに意識しないと人は視界に入っていても見えないものですね。ここの自然が失われるのを危惧し、公園建設を進言したボードワン博士の銅像は初めて知りました。桜越しの小松宮彰仁親王像はなかなか絵になります。



 ちょうど〝春のぼたん祭〟をやっていて、奥にある上野東照宮とのセット券を購入してのんびり鑑賞しました。ぼたん苑は思いの外広くて見応えがあり、ちょっと古都に観光に来た気分にもなれます。少し小高いところにある〝上野大仏〟は巨大な顔だけでパコダ(仏塔)を回り込んだところにあります。ここは無料ですが16時閉門です。でも係の人が早く帰りたかったのか20分前に閉めますと急かされました。そのすぐ裏手にある神社はかなり無理すれば、京都の伏見稲荷大社を妄想できますし、京都の清水寺に見立てた清水観音堂には浮世絵で有名な〝月の松〟もあります。そこから一気に階段を降ると不忍池辯天堂です。ここは琵琶湖の見立てだそうです。周辺には〝ふぐ塚〟とか〝包丁塚〟とかなぜかいくつもの塚。池をぐるっと回ると下町風俗資料館もあります。





 噴水のある広場では瀬戸物市など様々な催し物が開かれます。〝TOKYO数寄フェス2017〟というイベントで寛永寺の山門「文殊楼」がインスタレーションとして再現されたのを見る機会がありましたが、幻想的でとても美しかったです。またこういうイベントが日常的に開催される日が早く来てほしいものです。