ダダイスムとシュルレアリズムで浮かぶアーティストといえばマルセル・デュシャン。2018年の東京国立博物館・フィラデルフィア美術館交流企画特別展『マルセル・デュシャンと日本美術』は彼の作品及びシュルレアリズムの作品を初めて私が意識して鑑賞した展覧会でした。今回は同様にアーティストであり、デュシャンの親友マン・レイの『マン・レイと女性たち』(Bunkamuraザ・ミュージアムで9/6まで)へ行ってみました。ダダイストそしてシュルレアリストとしてのマン・レイの作品を写真中心に、しかも彼と関わった女性たちに基準を置いて構成されたおもしろい展示でした。考えたら彼の作品をこんなにまとめて観たのも初めてでした。



 芸術家とミューズはその生きた時代に新しいエネルギーを生み出すものです。大抵は愛憎渦巻く展開がお決まりのようにあって、それがさらに芸術家に発想をもたらすようですが、このマン・レイと女性たちの関係から見える創作活動では、あまりドロドロしていないというか、交流のあったピカソとはまるで違う関係性を女性たちと築いていたような印象を受けました。また、多くの芸術家たちと交流していた様子もよくわかり、マン・レイによるポートレートに写されている彼らの素の顔が興味深かったです。


 ポスターに使われている写真はソラリゼーションと呼ばれる技法で、当時の恋人リー・ミラーによるハプニングからできたものだそうですが、独特の光沢を感じる美しいモノクロ写真だと思いました。『アングルのヴァイオリン』のモデルがキキだったを今回知りました。


 この展覧会で数点あった〝ローズ・セラヴィ〟関連の作品の中で、デュシャンがローズ・セラヴィという女装した別人格の人物になり、それをマン・レイが撮影した写真があったのですが、これまでマン・レイとデュシャンをごっちゃにしていました。2人は1915年に出会ってから生涯の親友となり、アーティストとしてずっと交流をしていて1968年にマン・レイ夫妻がデュシャン夫妻宅を訪問した日の深夜にデュシャンの訃報を知ったそうです。作品の向こうの人物像がいろいろわかるし、彼が活躍したパリは実に芸術家だけでなく、彼らを取り巻く様々な人々との興味深い物語を妄想して、またもベルエポックな世界にトリップしてしまいまいました。


 今回は写真作品がメインですが、絵画、彫刻にオブジェを制作も何点もありました。シュルレアリストというのは訳すと〝超現実主義〟ということだそうで、よくわからなくとも気軽に鑑賞できます。