ファッションで時代を振り返ることで簡単に脳内タイムトラベルができると思った展覧会が、国立新美術館で開催中の『FASHION IN JAPAN 1945-2020―流行と社会』(〜9/6まで)です。乃木坂駅からだと階段を上がるところから美術館の建物にいる気分になれ、雨でも傘なしで行けます。ここも日時指定予約制を奨ということでしたが、意外にも当日券の列に若者も多く並んでいました。やはり事前購入は彼らも煩わしいのかもしれません。




 展示は表題にあるように日本の洋装文化を辿るもので、外国から来た服から、やがて日本人デザイナーが世界を席巻していくのを実際の服や映像でわかりやすく展示していますが、自分の生きてきた時代をこういう視点で思い返すと、日本の世相の変遷を年代順にわかりやすく確認でき、自身の過去の記憶を呼び覚ませてくれる面もありました。そして、こんなにも日本のデザイナー、後にはストリートファッションが世界中に影響していたのを改めて知ることもできました。バブル終焉まではファッションが時代を象徴していた部分が大きかった気がします。たとえその流行を意識して追っていないとしても、どの世代も短めのスカートであったり、幅の広いネクタイだったりしていました。いろんなジャンルがそれぞれ隆盛を極めていて、DCブランドが流行り、カラス族と呼ばれるような人もいれば、ハマトラに身を包む一軍や竹の子族も同時に街に溢れていた覚えがあります。


 6月に開催された文化服装学院の『髙田賢三の回顧展』でも彼の残した代表的な服だけではなく、雑誌や映像などで当時若者だった世代、そして今の若者にも楽しめる展示でした。



 どちらの展覧会にもファッションが中心にあった頃を知らない若者が多く来場していましたが、来ている人の年齢の幅は広かったです。


 さて、ファション絡みでいうと映画『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』(2014)がユニークです。ニューヨークの7人の老齢な女性たちがそれぞれのファッションで個性を貫いている様を描いているドキュメンタリーで、観ると自分を肯定する気になれます。また、以前テレビ番組で見た世界一エレガントなコンゴの紳士集団「サプール」という人々の「平和・非暴力の象徴」としてのおしゃれというのには感銘を受けました。


 展覧会の最初のエリアの映像で、まだ着物の女性がほとんどの中、最新の洋装に身を包んだモガの姿が映し出され、戦争前の平和を印象付けてくれましたし、やがて厳しい統制下でも密かにおしゃれを楽しもうとしていたのもわかりました。やはり平和であればこそ自由に楽しめ、そうあるべきだとつくづく思いました。


 時代を知るということでおまけ情報。『石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか』展オンライン展示アーカイブが期間限定公開中(2022/3/31まで)。