まったく不勉強で有名な『東洋唯一の地下鉄道 上野浅草間開通』のポスターの作者を知らなかったので、先日行って来た『杉浦非水 時代をひらくデザイン』(〜11/14)はとてもためになりました。会場はたばこと塩の博物館です。昔、渋谷の公園通りのど真ん中にあって、喫茶店で待ち合わせる代わりに使ったことがあります。なぜなら、コーヒー1杯より入館料が安かったからです。墨田区に移転して立派な建物になっていますが、相変わらず入館料はたったの100円! むしろ渋谷の時より安くなっている気もしますが、これで特別展まで全部観ることができます。



 さて、杉浦非水とはどんな人物だったのか、作品と共に彼の生きた時代と関わった人々との交流についてもわかるようになっていましたが、黒田清輝や藤田嗣治などとの付き合いとか、三越のポスターにたばこのパッケージデザイン、のちには美術大学で後進の育成に携わっていたとか、なぜ彼のことをこれまで知らなかったのかとつくづく思いました。あの地下鉄のポスターはことあるごとに目にしていたのに。彼が画家ではなく図案家という選択をしたことで、近代日本のグラフィックデザインがどんどん世に広がっていったわけで、もっと知られてもいいのにと思いました。もっとも現代でもグラフィックデザインは手掛けた人たちの署名があるわけでもなく、一過性の宣伝に過ぎなかったりするので名前が上がるのはごく一部なので、知られていないのは当然なのかもしれません。


 それにしても膨大な量の作品には圧倒されました。特に本の装丁は、同時期の竹下夢二や小村雪岱とはまた少し違うモダンなものが数多くあって、今でも充分受け入れられるような素敵なデザインでした。他に非水のスケッチや美術学校の卒業制作の孔雀の絵に黒田や藤田の作品なども少しですがありました。



 さて、この博物館は専売公社によって設立されたので、常設のたばこと塩についての展示も別々のフロアで見ることができます。塩の紹介コーナーは世界の塩や塩の精製の模型など、ちょっと子どもの学習向きな展示ですが、たばこの方はかなりいろいろなものがあるので喫煙家でなくてもとてもおもしろいです。



 まず、部屋の入口がマヤ遺跡に入るのかという気にされられますし、数えきれないパイプのコレクションやたばこに関するポスターや箱の展示、たばこの葉の栽培から精製に使われた道具など見どころがたくさんあり、実は何度か来ているのですが、特別展で疲れていつもざっとしか見ることができていません。今回は非水のデザインしたパッケージやポスターをこのフロアでも鑑賞できました。


 駅から少し離れていますが、一見の価値ありの博物館です。