上野の森美術館で『蜷川実花展-虚構と現実の間に-』(11/14まで)が開催されています。



 演出家の蜷川幸雄を父に持ち、その存在に負けないような感性でカメラマンとして注目されているのが蜷川実花だという認識でした。最近は映画監督としても知られている彼女の監督デビュー作『さくらん』(2007)がまた蜷川実花カラー満載で、奇抜な原作マンガの世界観をさらにアップデートさせた度肝を抜くような色彩あふれる映像と演出でした。その後の『ヘルタースケルター』(2012)、『人間失格 太宰治と3人の女たち』(2019)も色彩がとても印象に残っています。それに出演している俳優陣(特に女優たち)の醸し出すオーラが彼女の色をも纏っているようで、より濃厚な人物になって映画としてもおもしろかったです。




 初めて彼女の作品を知ったのは、写真集『永遠の花』(2006)で、暑い国では墓に飾る花は生花では持たないから敢えて造花を備えているというのを彼女の作品で知り、その着眼点が印象に残っていました。それ以降、独特の色使いですぐに〝蜷川実花〟作品とわかるほどの彼女の確固たる世界があちこちで紹介されるのを見るようになりました。強烈なのに決して不快ではないバランスがすごくて、逆に引き込まれてしまいそうです。


 驚くほどたくさんの写真集を発表し、写真展もたびたび開いていますが、今回は単なる写真展というのではなく彼女の内面まで披露している感じの構成になっています。


 最初は彼女ならではのたくさんの花の写真。その展示もパネルだけでなく部屋一面であったり、また人物写真がずらっとあった後にプライベートな部分を露出させた作品が並んでいる。たとえ何の機能もないシャッターを押すだけの〝写ルンです〟で撮っても独特の構図とカラーがそこにありました。


 そして、最後に積み上げられた彼女の私物に、溢れるばかりの造花が配置された彼女の生命の樹のようなオブジェが置かれた部屋がありました。何だか彼女の内面を見ているような気がしつつ、そんな簡単には明かさないわよと言っているような不思議な空間です。


 難を言えば、今回の展覧会は料金的にはもう一部屋分、さらに展示があったらよかったなと思いました。



 もうひとつ、煌びやかなものつながりでブランド創設100周年を記念した「Gucci Garden Archetypes」(10/31まで)という展覧会を天王洲のB&C HALL・E HALLで見ることができます。ブランドのことは知らなくてもなかなかおもしろいシュールな世界を体験できます。こちらは予約制・無料です。