今年になって感染が増えてしまい、また美術館がしまってしまわないかちょっと心配ですが、ほとんどが事前日時予約制を導入し、観客もそのシステムにだいぶ慣れてきました気がします。炎天下にものすごい行列を並ばなくても、人の頭越しに観なくてもいいのはありがたいですが、やはり思い立ったら行ければと思います。


 一時期予約制だったギャラリーでも、もう混んでいなければ規制はないようです。なかなか見応えのある展示をいくつか銀座で観てきました。


 まず、数寄屋橋の交差点近くにある銀座メゾンエルメス フォーラムの3組のアーティストたちによる『「転移のすがた」アーティスト・レジデンシー10周年記念展』(4/3まで)。こういう現代アートはただ観て何か感じたり、連想すればいいのだろうと思えるようになってよく行くギャラリーです。それほど広くはないですが奥が吹き抜けで一面ガラスなので明るく、ここに身を置くだけでも気分がいいです。



 展示された花がすでに枯れているので係の人に聞いてみたところ、その変化も含めて作品なのだと教えてもらいました。まだ生き生きしているうちに一度来たかったなと思いましたが、そこは想像してみるという手段で鑑賞しました。


 そこからほど近い交詢社通りのggg(ギンザ・グラフィック・ギャラリー)の『ソール・スタインバーグ シニカルな現実世界の変換の試み』(3/12まで)は、これで無料かと思うほどでした。アメリカで最も愛された芸術家の一人だそうです。和田誠事務所からの寄贈もあって確かに近い雰囲気のユニークな作品が多く、何より古さを感じないのが興味深かったです。



 銀座マロニエ通りのCHANEL NEXUS HALLで開催中の『RED 堀清英写真展』(2/20まで)はRED・GRAY・WHITEの3つの部屋に構成されています。

 その部屋の奥へ誘われるようなレイアウトのせいか、作品のイメージでなのか、何だか不思議の国のアリスになって見失った白ウサギを探しながら進む気分でした。誰かが話している声だけで姿が見えないため、自分だけ異空間にいるような感覚になったり、凸凹の展示や台の下が大きな鏡だったりしたからかもしれません。ぐるっと回ってスタートと地点に戻ったところで、赤い壁に溶け込むような赤いセーターに見事な白髪のおかっぱ頭の人にいきなり、「何か質問があったらどうぞ!僕が作者です」と声を掛けられました。とても気さくな方で、プロフィールからイメージしていたカメラマン像とはずいぶん違いました。感想としてアリスが浮かんだと言ったところ、いいもの見せてあげるとWHITEのエリアに案内され、「ここに19世紀のアリスの本が写っているんだ」とニコニコしながら教えてくれました。僕を撮ってもいいよということなので、図々しくプロの写真家を撮影させてもらいました。こんなこともあるのですね。


 もうひとつおまけ情報。丸の内の三井住友銀行東館1F アース・ガーデンで『SMBC meets Contemporary Art ~Come take a look!展』(2/18まで無休)を開催中。大きなビルのエントランスは以前からもったいないくらい広いと思っていたのですが、素晴らしい使い方だと思いました。結構大きな作品も展示されていて、しかもふらりと立ち寄れるビジネス街というのがいいです。こういうのが増えるといいなと思います。