今回もマンガの原作展ですが、また違った作風のマンガ家の作品展を2つ観てきました。

 まずは弥生美術館で開催が始まった『デビュー50周年記念 くらもちふさこ展―デビュー作から「いつもポケットにショパン」「天然コケッコー」「花に染む」まで―』。(5/29まで入れ替え・I期〜IV期)



 少女マンガで恋愛ものですが彼女の作品は少し異色で、それが当時の読者に指示されて大人気となり、後のマンガ家に影響を与えました。最近の学園恋愛ものより現実的な気がしますし、あまりキラキラした作風ではないのでどの作品も男性でも読みやすく今でも十分楽しめると思います。

ちなみに2018年の朝ドラ『半分、青い。』に登場した少女マンガ家・秋風羽織(豊川悦司)の作品として使われましたし、『天然コケッコー』(2007年)が映画化され、つい最近『いつもポケットにショパン』(1980〜81年)が朗読劇として上演され、変わらず人気なのだと思いました。

 併設された夢二カフェ〝港や〟限定のカプチーノが飲めます。またで夢二美術館で開催中の『夢二がいざなう大正ロマン―100年前の文化と女性を中心に―』も観ることができます。


 さて、もうひとつは青年マンガの原画展『描くひと 谷口ジロー展』(世田谷文学館で2/27まで)。




 私が初めてその名前を知ったのが2016年に森アーツで開催された『ルーヴル美術館特別展「ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」』でした。そこでフランスで最も知られた日本のマンガ家という紹介を読んで「誰?」と思い、作品を見てもピンときませんでしたが、あとで『孤独のグルメ』原作・久住昌之の作画を担当していたのを知りました。これはテレビ番組としてすでに観ていて、そのオープニングにカットが使われていたのを目にはしていましたが、作画した人の名前に注目していなかっただけでした。でも、日本で一般的にはそれほど知られていなかったと思います。マニアの間では知る人ぞ知るというところでしょうか。単に私のアンテナが向いていなかっただけかもしれませんが、なぜフランス人がそんなに知っているのかずっと疑問だったのが、この原画展でやっとわかりました。でもどこがフランス人の琴線に触れたのかはよくわかりません。谷口ジローの『歩くひと』(2020から)もテレビで放映されましたが、フランスでの実写化は早かったようです。マンガの方は個人的にはちょっと好みではないのでコミックスを読もうとは思わないですが、原画はとても細かく、じっくり見ることができておもしろかったです。それに会場の世田谷文学館が、最寄りの芦花公園駅からのアクセスもよく、なかなか素敵な空間で街の雰囲気もよかったです。

 それにしてもマンガと一口に言っても、こうも違うのかという2人の原画展。絵画として実物を観るのもなかなかおもしろいので、ぜひのぞいてみてください。