上野の東京国立博物館の本館で開催中の『特別展「空也上人と六波羅蜜寺」』(5/8まで)は京都の六波羅蜜寺が改装中ということで、半世紀ぶりに〝重要文化財 空也上人立像〟が東京にやって来たというのですから、これは見ておかなくては。



 まず13世紀に造られたというこのビジュアルが驚きではありませんか? 口から仏が出ているような絵画描写はあっても立体像で表現してしまうという発想が凄過ぎます。この小さな仏は〝南無阿弥陀仏〟の6つの言葉が仏に変わった様子を表しているそうです。今ならマンガのキャラクターの発した言葉が吹き出しで描かれているのを実写版映像で視覚効果で再現するというところでしょうか。しかもぐるりといろんな角度から、今にも動き出しそうな出来映えをゆっくり鑑賞できます。


 さて、今回の展示はかなりこじんまりとしていて、場所も撮影によく使われる正面の大階段の裏側の空間なので正直これだけ?という点数ですが、作品に迫力があるので見応え十分です。


 一押しの〝空也上人立像〟は教科書でお馴染みらしいですが、私の記憶にないのは世代の差でしょうか。〝重要文化財 伝平清盛坐像〟は見覚えがありました。これが清盛だという確証はないようですが、源氏が滅ぼした平家のためにのちに造られたそうですが、ちょっと顔が怖くないですか?昔写真で見たときに何だか恨めしそうに見えてしまっていたのですが、実物を観てもやっぱり清盛の気を鎮めようとしているようには思えませんでした。ここのところ大河ドラマや平家物語のアニメなどでやたらに不機嫌な清盛を見た影響があるかもしれませんが、二次元ではできなかったいろんな角度から鑑賞できるという展示は面白いです。ちなみに空也上人立像以外は裏側に回れません。一番気に入ったのは運慶作の重要文化財〝地蔵菩薩坐像〟でその顔の素晴らしさに見とれてしまいました。


 イヤホンガイドの解説を聴きながら十分楽しめましたが、時間と体力に余裕があれば、ぜひ常設展示を観ることをお勧めします。前回紹介した桜に因んだ展示も実はその時の札が外されただけで、特に展示替えされていないので見ることができますし、月替りで作品を展示する未来の国宝の部屋では今月「見返り美人図」が飾られ、次の「焔」の精巧な複製も近くにあります。実際の大きさを知るとイメージが変わりますし、ここならテーマによる展示のなかで人の頭越しにということなく細部まで堪能できます。


 特におすすめの「日本文化のひろば」では大人も楽しめるものがいろいろあって楽しいです。浮世絵スタンプとか動く壁面、そして時間があったら挑戦すべきなのがオリジナルの硯箱のデザイン。画面を操作して作った作品の展開図をダウンロードできます。



 常設展示とはいえ、たぶん季節とかで入れ替えはあるので、ここはひとつ総合文化展を3回入れば元が取れる年間パスでふらっと立ち寄れる場所にするというのはいかがでしょう。