〝空中庭園〟という言葉の響きが気になって、その意味するものがいったいどんなものなのか、まだまだ情報不足な子ども時代に「庭が浮かんでいるのか?」「どうやってそこへいけるのだろう」とボンヤリ考えていたことがありますが、後に〝バビロンの空中庭園〟という世界七不思議のひとつであるということを知り、エジプトっぽいところで庭園の木々はヤシの木系で、そこで寛ぐ人々はゆったりしたローブのようなアラビアンナイト風の服装かなとそんなイメージにだんだん落ち着いた気がします。そのバビロンの空中庭園が描かれているというので映画『アレキサンダー』を観ましたが、CGで再現された想像以上のスケールにびっくりしました。さすがに当時絶大な力を持っていた国でも現代の大都市のビル並みの高さの建造物の上にある庭園は映画だからとはいえ、ちょっと違うなと思いました。すでに少女マンガにどっぷりはまっていた学生時代に、誰にも顧みられていないような廃園に近い静かな英国のどこかにある貴族の城の一角にあるというようなイメージに変わっていたからです。


「空中の庭園」ならジブリの〝天空の城 ラピュタ〟が文字どおり近いかもしれませんが、アニメの色彩のせいかやっぱり私のイメージには合わないと思いました。現実にはなかなか理想の〝空中庭園〟は難しいですが、それなりの空中庭園(=屋上庭園)に行くことができます。これは都市のヒートアイランド現象緩和でビルの緑地化推進の流れと技術の向上により、大きな木が植えられているところが増えたからです。


 これまでに行った最も〝空中庭園〟っぽい屋上庭園はお茶の水の三井住友海上・駿河台ビルの庭です。そこは樹木の種類も豊富で、商業施設はないので静かです。しかもお茶の水界隈は緑がとても多いので、屋上庭園の存在があまり目立他ないというのもいいです。平日のみ入れ、もちろん無料。最近知ったのですが、近くの明治大学のリバティタワーの横、2階の高さに桜の木のある広場があり、お花見できます。




 繁華街では2018年にできたミッドタウン日比谷の6階のパークビューガーデンも日比谷公園を見下ろせ、気持ちいい空間です。有楽町駅に近い東急プラザ銀座のキリコテラスにはシンボルツリーの桜が1本だけですが、グリーンウォールがあり、テーブルと椅子がいくつもあります。交通会館の3階は、屋上庭園「コリーヌ」として以前よりベンチや花壇が増えています。ここは新幹線が通るのを眺めることもできますし、最新の〝フラクタル日除け〟で木陰のような空間を創り出しています。そして、GINZA SIXには銀座最大の屋上庭園があります。ブランドの店だらけで買物に訪れることはまずないですがゆったりできるし、木が多く、秋なら虫の鳴き声まで楽しめます。何より空が広いです。たまにインスタレーションをやっていることもあり、とても居心地のいい場所です。まだ知らない庭園をこれからも見つけてみたいです。