一度見たら目に焼き付く独特のフォルムの作品を創作し続けるボテロ。てっきりアールデコ時代あたりの人だと思っていましたが、今も創作しているという現役90歳のアーティストということにびっくりです。


 コロンビア人だそうですが、コロンビアと聞いて浮かぶのはコーヒーとサッカーくらい。南米の画家ならメキシコのディエゴ・リベラとフリーダ・カーロしか浮かばず、〝フェルナンド・ボテロ〟のことはほとんど知らなくて、絵画作品を観たことがなかったのでこの人は彫刻家だと思っていました。


 ということで、Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の26年ぶりの日本公開という『ボテロ展 ふくよかな魔法』(7/3まで)の絵画展に行ってみました。



 南米だからか、やはり色彩が鮮やかで明るいイメージの作風でした。どれもかなりの大きさで、そこにはち切れんばかりのフォルムの人物が描かれています。特に美術に関心がなくてもそこに圧倒されて観ているうちに、何だかちょっと楽しい気分にさせてくれます。


 マリアが抱くキリストは半ズボンで、磔刑図のイエスも重量級。どれもこれまで観た宗教画とは思えないし、名画を再構築した作品は元のとはかけ離れていますが、なんだかある種の迫力があります。


 スペイン語圏は宗教に関して結構厳格なところがあるのではないかと思うのですが、そういう感覚の薄い日本人としては、ちょっと心配するくらいの宗教画ですが、いろんな見方ができて面白いなと思いました。でも、見ていくうちに実は描かれている人の表情がほとんどないことに気がついて、逆に怖さというか何か隠されたものがあるように感じました。例えば《バルコニーから落ちる女》は解説を読んでみると、ちょっと不穏な世界が背後にあるのがわかって、この楽しげに見えるふくよかな人々の背景を改めて考えてしまいます。それでも、やはり美しい色彩の静物画などは眺めているだけで少し幸福感に浸れます。


 ちょうど撮影OKの日だったのですが、父親と小さな女の子が楽しそうに絵をバックにポーズをつけて写真を撮っていたのが印象的でした。その作品からどんなことを受け取るかはそれぞれなので、いろんな鑑賞の仕方があるとつくづく思いました。


 今ならドキュメンタリー映画『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』も上映中です。



 ちなみにボテロの彫刻作品が日本橋本町のあるビルの入口に設置されていて、いつでもその〝ふくよかな人〟を観ることができます。