京橋にあるかつてフィルムセンターと呼ばれていた〝国立映画アーカイブ〟は1984年に一部火事になり、多くの資料を焼失させてしまったというニュースは衝撃でした。それを聞いた時、一度くらいしか訪れていないのにもうなくなってしまうのかと思っていましたが、新しい建物になって名称も変わって、また貴重なフィルムの上映や展示会が開催されているのはありがたいです。


 どうも普段通らないエリアなのでなかなか行く機会がなかったのですが、今開催されている『日本の映画館』(7/17まで)という企画展は見逃せないなと思って、初めて行ってみました。映画館で映画を鑑賞するのが好きな映画ファンにとってはとても興味深い展示でした。

 一般料金250円(65歳以上は無料)というのに展示品の数はめちゃくちゃ多くて、気がついたら2時間経っていました。映画というものが日本にやって来て、物凄い人気だった時代の様子がよくわかりましたし、当時のポスターに映像、音声、道具や写真などとても興味深いものばかりです。




 映画館や映画を製作する人々を描いた作品は洋画にも邦画にもたくさんありますが、パッと浮かぶのはやはり『ニュー・シネマ・パラダイス』でしょう。主人公の少年トトが入り込む映写室の大きな映写機に装填されていたのはまだ可燃性のフィルムで同じようなフィルムもありましたし、当時の撮影機材なども展示されていて、今ではスマホで撮れる映画をいろいろ大変な思いをしながらも、情熱溢れる人々によって作られていたのだなとよくわかりました。また、一大娯楽だった映画が近年次第に集客数が減っていった歴史もわかります。


 映画が人々の最高の娯楽であった時代の話といえば、最近上映された『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』(2020)で、すでに内容がわかっている巡回上映作品に熱狂する観客が描かれていました。会場の席だけでなく、張られた白い布のスクリーンの反対側にもぎっしり人がいるシーンを観て、子どもの頃に夏休みの野外映画会でも同じようなことになっていたなと思い出しました。

 他にも昔まだ無声映画だった頃を描いた『カツベン!』(2019)や、『海辺の映画館―キネマの玉手箱』(2020)、『キネマの神様』(2021)は映画に関わる人々とそれぞれの時代背景が描かれているのも見どころで面白かったです。こういう劇中劇のような作品はストーリーだけでなく気になる部分がたくさんあります。


 劇場で見知らぬ人々と時間を共有する映画鑑賞は、思わず笑ったり歓声をあげるとか、また皆が息を飲む雰囲気を感じられるというのがいいです。ちょっと共犯者めいた感じというか。昔と同じように映画館に行けるのは本当にいいものです。