東京都庭園美術館は建物も鑑賞対象です。


 目黒駅から歩いて7分ほどで、敷地入口の門に到着。チケット売場の前を通って長く緩やかに左へカーブするアプローチをゆっくり進んでいくと旧朝香宮邸が見えてきて、なんだか客として呼ばれて訪れたという気分を味わえます。


 昭和初期にフランス留学していた朝香宮が当時の最新トレンドだったアール・デコを取り入れた邸宅をフランスのアンリ・ラペン、マックス・アングランなどの外国人や宮内省内匠寮の権藤らに依頼して築いたそうです。



 なんといっても最初に目にするルネ・ラリックがデザインした正面玄関のガラスの優美な女性のレリーフ装飾が美しく、ワクワクします。よくこんな繊細な邸宅が戦争をくぐり抜け保存されたと思います。


 アール・デコはその前まで流行っていたアール・ヌーボーとは対照的に直線が多用された装飾です。個人的にはアール・ヌーボーの方が好みですが、住まいとしてなら、とても自分の家にはできませんが、すっきりと洗練されていていいなと思います。


 今は美術館として使われているので、展覧会になるとそれぞれの部屋に作品が掛けられるわけですが、ここの建物自体を観せる展示会が毎年のようにあり、それを知った時はもちろん駆けつけました。2017年に大改装され、新しくエレベーターと新館が設置された後の建物展示では、それまで非公開だった3階のウィンターガーデンも公開されていました。屋上階に花台や水道の蛇口、排水口が備え付けられていますが、ガラス窓に囲まれた人造大理石の市松模様の部屋で、おそらく冬でも広い庭を眺められるようにしたのではないでしょうか。とてもモダンな空間です。それぞれの部屋の細かい部分もこういう機会だとしっかり見ることができるので建物好きにはありがたい企画です。




 絵画などの展覧会の時は、個人宅にあるプライベートコレクションを楽しめるという感じなのも魅力です。新館の展示スペースは広く天井も高いので、より多くの作品をじっくり見ることができましたし、ミュージアムショップも広くなりカフェもあります。


 今はコロナウイルスのために休館中ですが、次回の展覧会『建築にみる2020東京モダン生活(ライフ)—東京都コレクションにみる1930年代』は4/18〜6/23なので何とか再開されたら、また観に行ってみたいものです。