ついに開催!『ボストン美術館展 芸術×力』(東京都美術館・10/2まで)はコロナで一度中止になった展覧会です。なんと言っても海外の美術館からの貸し出し。日本で開催されるタイミングは本国の美術館の改装工事中だったりするので、このいつコロナが収束するかもわからないご時世ではもう無理だろうと思っていました。ところが1点だけ差し替えで約60点が来日。2年ぶりに東京だけですが開催されています。


 ボストン美術館といえば屈指の日本美術を有しているので、てっきり日本の作品だけだと思い込んでいました。なのでタイトルの「芸術×力」というのが何なのか、まったく考えずに行ったら最初に大きなナポレオンの肖像画に迎えられてびっくりしました。



 なぜナポレオンなのかというと古今東西の権力者たちがいかに芸術の力を利用してきたかというのをテーマにしているからでした。(チラシのタイトルと日程くらいしか見ないで足を運ぶとこういうこともあります)つまり欧州、エジプト、日本そして近代アメリカとそれぞれの時代のトップと芸術品の関係という視点から集められていて、絵画だけでなく宝石まで展示されたおもしろい構成でした。ナポレオンは戴冠式や進軍する勇姿など多くの絵を残していますが、今でいうイメージ戦略に長けていたのですね。


 彼の肖像画は実はものすごく多く制作されているそうですが、描かれた豪華なマントの白い毛皮部分は白テン(オコジョ)で、黒い点々が尻尾の先というのをあとで知り、どれだけ使われたのかちょっと怖くなりました。


 さて、今回これは絶対見ておいて良かったと思ったのが、日本にあったら国宝級の絵巻。2種類展示されています。しかも期間が短くなった分、前期後期で分けずに一挙展示というのが素晴らしい。


 《吉備大臣入唐絵巻》4巻は実在した吉備真備の超人伝説が描かれていて、子どもに受けそうなシーンもありました。そして、もうひとつの『平治物語絵巻 三条殿夜討巻』が素晴らしいものでした。緻密で迫力のある絵巻で鎌倉時代の作品で十数巻あったうちのひとつだそうです。あの鳥獣戯画より幅があって、ずいぶん大きい印象を受けました。武将の甲冑や兜に武器、疾走する馬、それに巻き込まれる野犬に逃げる人々。燃え広がる炎。まるでアニメーションを見ているように感じられる描写に思わず見入ってしまいます。


 走る牛車の車輪はグルグルの線で素早く回っている様を表していて、描き方がもうこれはマンガそのもの。こういうのはやはり西洋絵画ではないものだと改めて思いました。たぶん日時指定で人数制限されているからだけでなく、平日ならかなり空いていてじっくり鑑賞できると思います。