2016年に、「ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-」として世界遺産に登録された国立西洋美術館は、実は当初のデザインから逸脱していると問題になっていた部分と空調などの整備のため、1年半も休館していましたが、ついに今年再開しました。


 一見何が変わったのかなと思っていましたが、問題は前庭の植栽だったようです。


 1959年開館当時はまず正門が西側で、そこから入ることでロダンの『地獄の門』への直線と途中で直角に建物へ伸びる誘導線の存在を示し、外部との連続性がなくなっていた敷地を囲む塀を中が見える柵に変更したそうです。ということで今回はそっちから入ってみると、美術館の入口までに到る前に自然と左右にある『考える人』と『カレーの市民』に視線がいき、さらに正面の『地獄の門』を見ることになり、今までにない気分で美術館の入口に向かうことになりました。JR上野駅からだと、ちょっと回り道ですが一度試してみてください。


 さて、今開催しているのはリニューアル記念の『自然と人のダイアローグ―フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで』(9/11まで)です。



 東西の実業家、カール・エルンスト・オストハウスと松方幸次郎が、それぞれ自国の人たちのために絵画をという着想から始められた事業が、一度はうまく行きかけたのに戦争に翻弄され、掲げた夢の結果をしっかり見届けられなかったとこまで一緒で、それをのちの人々が夢を受け継いでフォルクヴァング美術館と国立西洋美術館というかたちにできたのは素晴らしい。


 その2つの美術館のコラボレーション企画展です。昔の一代で財を成したという人物は、もちろん今と時代背景が違いますが、文化を人々に届けようと私財を投じるというのが多いですね。


 今も継続して近代から現代のアートの収集を続けて、こうして今回2つの美術館設立の数奇な運命の物語とともに鑑賞できたのがよかったです。


 もちろんゴッホやゴーギャン、シスレーの今まで見たことのない作品もありましたし、点数が多くて見応えがありました。思いのほか若い人たちが来ていて、ちょっと意外だなと思いましたが、みなゆっくり観ながらいろいろ話をしている様子がいい感じでした。


 企画展のチケットで常設展も見ることができますが、最初の19世紀ホールと名付けられたところは無料です。世界遺産の書類の複製板も飾られていますし、建物の解説パネルもあるので一度のぞいてみることをおすすめします。日時指定ですが、当日券も買えます。