20代の頃、花見にそれほど興味はありませんでした。もちろんイベントとして桜のあるところへ行かなかったわけではないですが、「花を見る」ためではなく「集まってはしゃぐ」のがもっぱらの目的でした。でも歳をとるといろいろものの見方や考え方が変わるものだということを「花見」で思うようになりました。
いつの間にかニュースのトピックスとしての〝今年の桜前線〟なる予報をチェックしたり、どこそこは去年ほどきれいではないとか、今年は例年より遅いとか、実に平和な話題につい耳を傾けています。
地元では、計画的に植えられた桜通りを毎年歩行者天国にして「さくらまつり」を開催しますが、桜が満開になる日とこの祭りの日程がぴったり合うとは限りません。屋台が並び、楽団が行進し、フラダンスが披露されるなどの喧騒が繰り広げられる頭上は、すでに葉桜なんていうこともあります。何しろ近頃は季節がめちゃくちゃですからなおのことです。でも花見にかこつけた賑やかさに皆が浮かれて、たぶん脳内では満開に変換しているのだと思います。どちらにしろ「花見」が欠かせない日本人は多いわけですが、今年はそれすらできないというトンデモナイ事態になってしまいました。
でも、そんな人間界のこととは関係なく、多少の季節の狂いがあっても、やっぱり春が来て花々は次々と咲き始めています。今年は例年より早く満開になり始めた桜に雪が降り積もるという珍しい光景まで見ることができましたが、都内の名所へ行くことはできなくても、割と近所に緑が多いので散歩に出てみました。晴天の週末なのにあまり人が出ていないし、思わぬ気温の乱高下の影響なのか、すぐに散ってしまわなかった桜も楽しむことができました。
古い団地なので建物の間に植えられた樹木はかなり大きく、しかも種類が多いです。通りの桜はほぼソメイヨシノですが、こちらは数種の八重桜やしだれ桜、御衣黄という薄緑色の桜まであります。メタセコイアの根元には大繁殖したハナニラで埋め尽くされているところがあったり、スノーフレークや山吹など誰かに植えられた他にシャガや小判草、スズメノエンドウなど野草があちこち咲き乱れ、気の早いケヤキの先に若葉が出始めていて、美しい春の競演が楽しめました。
わが家のベランダの植木鉢のスミレも気がついたら咲いていたのがうれしかったです。まだまだいろんな花の開花があるので、お楽しみはこれからです。