高度成長期だった日本の60年代は、カラフルなサイケデリックなイラストが街や雑誌に溢れていましたが、私が子どもだったからか70年代はもっと毒があってエロティックで、ちょっとそれを見ていることを人に知られたくないようなものだったイメージが何となく浮かびます。そのイラストレーターのひとりが宇野亞喜良でした。


 宇野亞喜良の作品は、当時をまさに象徴していたと思います。アングラな劇団の告知のポスターや雑誌に掲載され、独特で風変わりな表現なのでまったく興味がなくとも目に付いてしまうものでした。同じ頃だったか曖昧ですが、米倉斉加年の描いた夢野久作の『ドグラ・マグラ』の装丁も連想します。〝禁断〟という言葉がパッと浮かぶものでした。今も本屋で目にすることができるかもしれません。


 検索すると米倉作品は見たことのないもっといろんなタイプのが出てきますが、宇野作品はさほど変わっているわけではありませんが、ここまで個性的で強烈な印象を残す画風では一世を風靡した時代の象徴となり、やがて流行遅れになって何だか古臭く、よく言えばノスタルジーを感じるようになるのが多いと思います。


 以前、推しのバンドがコラボしたことがあり、「えっ?まだ現役だったの?」と一瞬思ったのですが、実際に見るとそのときのアルバムのコンセプトに見事ハマっていて驚きました。宇野亞喜良は常に〝今〟に乗り続けていました。時に最新とコラボもしながら、またSNSのアイコンを宇野のタッチのものに変えるサービスなんていうのもやっていました。


 彼の基本的に変わっていない独特の少女たちの眼差しは、彼女たちの前に立つ人々の心を捕らえて惹きつけてしまうのかもしれません。


 そんなすごいエネルギーを放出し続けている現役米寿のイラストレーター宇野亞喜良。彼の展覧会がギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)第392回企画展『宇野亞喜良 万華鏡』(1/31まで)と銘打って開催中です。地下の階に昔のポスターなどが展示されています。会場には若い人も多かったです。ここは無料で一部を除いて写真撮影OK。見終わった後はぜひ周辺の店のウィンドーなどもおもしろい展示があったり、数寄屋橋の緑地に岡本太郎の作品もあるので、ブラブラしながらアート鑑賞するのがおすすめです。