サントリー美術館で開催中なのが『没後190年 木米』(3/26まで)ですが、そもそも〝木米って誰?〟と思って行ってみました。



 画家、そして陶工でもあり、古陶磁研究もしていた江戸時代の文人だそうです。


 今回展示されている作品を観ると本当にいろいろなタイプのものがありました。陶芸家というのはひとつの作風を追求していくものだと思っていたので、こんなにバラエティに富んだ作品を一人の人が生み出したのかと驚かされました。彼は途絶えていた加賀九谷焼の再生をしたり、焼き物全般の研究をして、そこから独自の作品を生み出していったようです。


 その様々な様式でたくさん造られたのが煎茶道具でした。木米の煎茶道具は人気だったそうで、今回展示されているなかで涼炉という急須を温める道具がとても凝っていました。大きな幕にプリントしたものが撮影可だったのですが、実物は高さ確か20センチほどでこの細工の細かさには驚きました。


 陶芸だけでなく絵画を池大雅や高芙蓉に学び、多くて手掛けていました。また親友に儒学者・頼山陽、画家・田能村竹田がいて、とても才能ある人たちとの交流がある有名人だっただったのがわかりました。


 ところで茶道というと戦国時代に千利休が確立した抹茶を点てる方を思い浮かべます。映画になった千利休の話は『千利休 本覺坊遺文』(1989)、『利休』(1989)、『利休にたずねよ』(2013)などありますが、どうしても作法が厳しそうなイメージです。『日日是好日』(2018)の樹木希林演じるお茶の先生なら、ちょっと習ってみたいなと思いましたが、でもやっぱりなかなか近づきがたいです。


 普段急須でお茶を入れて飲むというスタイルは煎茶道から来ているのでしょうか。木米が活躍した江戸時代に身分も関係なく、町人にも気軽に楽しめる煎茶が京都、大阪を中心に拡まったそうです。同時代の上田秋成は〝売茶翁〟に影響を受けて煎茶解説書を表したというのは、今でいうなら流行にのって出版物を手掛けたということかもしれません。


 この煎茶道の祖の売茶翁という人は、2年前のドラマ『ライジング若冲』に登場していて、主人公の伊藤若冲に売茶翁が屋外で茶を振る舞うというシーンがありました。この仙人のような怪しい人物は何者なのかと思っていましたが今回の展示で解明しました。ドラマには池大雅も登場していて、こういう人たちがこの年齢で出会っていたのかというのがわかるのはおもしろいです。


 私にちょっと敷居が高い店が並ぶミッドタウン六本木ですが、地下鉄駅から雨の日も傘要らずで美術鑑賞後に買い物とか食事を楽しめるという立地がいいです。


 天気なら目の前に広がるガーデンでのんびり過ごせます。ちなみにここにいるとご近所の人が犬の散歩に利用するので、あらゆる犬種を見ることができます。