ユトリロと区別がつかないこともありましたが、さすがに今は特徴的なパリの街並みの作品で間違えることがなくなった佐伯祐三は、エゴン・シーレ同様に夭折した天才画家でした。その佐伯祐三の特別展『佐伯祐三―自画像としての風景』(4/2まで)を鑑賞することができます。



 今回、東京で18年ぶりの本格的な回顧展というので、これまで佐伯の文字だらけのポスターが貼られたパリの街の絵しか知らなかった彼の作品を観に東京ステーションギャラリーへ。もう事前にコンビニでチケットを買わなくても入れます。


 写真を見て40歳代だと思ったのですが、なんと30歳で亡くなっています。シーレと大差ない若さです。彼も病死で当時治すのが難しかった結核でした。しかも彼の6歳の娘も後を追うように同じ月に亡くなっていて、いろいろシーレと重なります。最も似ているのは絵の才能があったということです。絵を学ぶ若者のなかで当時としては金銭的に余裕があったのも似ていますが、佐伯は自信のあった作品をフォーヴィスムの巨匠・ブラマンクに全否定されてしまった点がシーレとは大きく違いました。完全に打ちのめされたところから、ユトリロにも影響を受けたりなどさまざまに創意して独自の作風を築いていったようです。それにしてもこれからというときに病に倒れ、最後はかなり無茶をして自殺未遂までしてしまうなんて自分の命の短さに気づいていたのでしょうか。シーレ同様もし生き残れたらどんな作品を生み出したのかなと思いました。


 歪んだ建物も人物も描かれた線は擦れたりして写実的とはほど遠く、椅子など絶対座れそうもないのに不思議と安定感があり、引き込まれました。それとここステーション・ギャラリーの煉瓦の壁が背景にちょうどいい感じです。


 ネットで検索して佐伯祐三アトリエ記念館というのが中落合にあるというのを見つけたので、そちらにも行ってみました。西武池袋線椎名町駅から歩いて10分ほどの住宅地の中にありました。路地に入ってこんなところにあるのかと思いながら進むと、いきなり大きな三角屋根の水色の家屋が見えました。係の方に聞いたところ、昔は大きなお屋敷が多くあったのが細かく切り売りされて住宅が建ってしまったため、結果的に家に囲まれるようになったそうです。


 管理用の建物に設置された検温と消毒をしてから、一段高いテラスに上がってアトリエへ。実はここ無料で見学できます。


 大正時代のアトリエがこうして残っているのもとても貴重です。入ってみると屋根まで吹き抜けにした部屋には、入口の向かいの壁に付けられるだけの窓が施されていました。このアトリエ付き住宅を新築した佐伯ですが、パリに行く前後合わせて4年ほどしか住んでいないそうで、佐伯と娘の死後に帰国して画家として活躍した妻が亡くなるまでいたようです。


 敷地は狭いですが公園になっていてベンチもあります。真ん中の大きなソメイヨシノは佐伯が生きていた頃からあるかはわからないそうですが、ちょうど満開でしたし、かわいいピンクのシュウカイドウに白いジンチョウゲのいい香りがして、春を楽しむことができました。