ガウディに続いてスペイン絡みの展覧会『スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた』(〜9/3)が国立西洋美術館で開催されているのを観てきました。



 さほど宣伝されていないのは、目玉作品があるわけではなかったからのようですが、有名な画家の作品が思ったより多くありました。それもサブタイトルにあるように油彩画でしか見たことのなかった画家の版画など、初めてみるものばかりだったのでおもしろかったです。例えばダリといえば、写実的だけとあり得ない溶けた時計などの描写がまず浮かびますが、展示されていたドン・キホーテを描いたのはまったく違うテイストで、」ちょっと現代アートという感じでした。


 ちょうど直前にテレビで観たのが、『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』。ストーリーは今はCM監督をしている男が、若い頃に製作したドン・キホーテの映画の影響で人生が変わってしまったかつての村人たちと出会って、彼自身も翻弄されていくといういかにもギリアムらしい作品だったのですが、そのおかげで原作のドン・キホーテの話がなんとなく頭に入っていたので、やはりスペインにおいてこの破天荒な人物は芸術家たちを刺激するのだなと改めて思いました。


 今回解説を読んで、「ドン・キホーテ」という作品の与えた影響とか時代背景や解釈を読むことができたのも興味深かったです。


 それにしても活躍したのが祖国以外であるとか有名な代表作もフランスなどの他国に所蔵されているため、うっかり忘れていましたが、ダリ、ピカソ、ミロ、ゴヤはスペイン人でした。また彼らスペイン以外のオノレ・ドーミエ、ウィリアム・ホガース、マネなどの芸術家たちも闘牛やフラメンコなどいかにもスペインらしい題材をたくさん描いていたのですね。ヨーロッパの中でもイギリスやフランス、また同じ南国のイタリアとも違って、イスラム世界の侵略によって生まれた独特の文化がエキゾチックに感じられて惹かれたのかもしれません。


 また、ベラスケスの油彩画をゴヤやマネが版画で描いたものとかもありました。巨匠たちも模写とかいろいろ勉強していたのですね。人気の題材を版画にすれば、数多く売ることができたということかもしれませんが。



 一番驚いたことは、なんと今回の展示品はすべて日本にあるものだということです。開催している国立西洋美術館所蔵のが最も多いようですが、日本中の美術館から集められて、こうして学芸員さんによって企画できるくらい作品があるのがすごいと思いました。多少地味めですが、作品解説の音声ガイドも学芸員さんたちが自前でやっていて、無料でダウンロードして聴くことができます。


 モノクロの版画だけでなく、カラーのリトグラフや油彩画に大判の本などもあるので、楽しく観ることができました。