東京では終わってしまいましたが、今九州国立博物館で開催されている特別展『古代メキシコ―マヤ、アステカ、テオティワカン』(〜12/10)は古代文明好きならおさえておきたい展覧会です。
いくつもの謎多き文明が起こったメキシコの代表的な3つの文明が展示されているのですが、よくこんな巨大な遺物を持ってきたなと思う大きさのものもありました。今回の目玉であるマヤの『赤の女王(レイナ・ロハ)』は奇跡の初来日ということですが、大規模なメキシコ展は数十年ぶりらしく、個人的にはどれも初めて見るものばかりなので、〝古代メキシコの至宝約140点が一挙に集結〟という謳い文句どおり見応えがありました。それに大きな遺跡の写真パネルが雰囲気をつくってくれて現地にいる気分を妄想できます。
紹介されている3つの遺跡のうち、チチェン・イツァには行ったことがあります。前年にウィーンへの旅行中トランジットで時間を潰した空港で知り合った一人旅の人といつもの旅行仲間と3人で訪れました。
今では登れなくなっているピラミッドにも〝ここで怪我しても自己責任〟という旅行会社の誓約書にサインして登りました。結構階段の幅が狭くて高さがあるので這うようにして上まで行きましたが、そこからの眺めには感動しました。海のように360度一面に広がった緑の森が見たことのない景色でとても美しかったです。
球戯場や生贄のセノーテをツアーで見学後、ピラミッドの中に入るには列が長かったので断念し、ほかのツアー客はそこまで来ていませんでしたが、少し離れていた天文台へせっかくここまで来たからにはと敷地を走って何とか見てきました。
当時を思い出しながら、アジアやヨーロッパとは全然違うユニークな人物や動物たちの表現、生贄や儀式に人の皮を被るとか、かなり不気味なのにパッと見た印象はかわいいというギャップを楽しめました。また巨大でやたらに装飾的な香炉台は縄文の火炎土器を連想させ、平面的な顔立ちが親近感を感じますが、価値観とか精神世界の考え方がこんなに違う人々が地球の反対側に巨大な建造物の文明を築いて生きていたのだなぁといろいろ考えさせられました。ドクロとか心臓のモチーフ、彼らの死生観は今のメキシコの人々に引き継がれているのでしょうね。まったく違う価値観や思想に出会えるのもこうした展示会の面白いところです。