さまざまな描き方がされてきたアートで〝キュビスム〟と聞くとまず浮かぶのはピカソです。文字から想像するとおり幾何学的に対象物を描いたもので、ピカソとブラックが始めたというものだそうです。どう見れば人物がこうなるのか、まるで赤塚不二夫のマンガのよう。あれ?逆ですね。赤塚マンガがピカソを模したわけですから。体験的にマンガを先に認識してしまっているので、あとでインプットされたピカソがマンガに思えたのは仕方がないです。ということで改めて〝キュビスム〟を知るのにいいのが国立西洋美術館で開催中の『パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ』(〜1/28)です。



 ピカソはその長い創作活動の間に実にいろんな描き方をしているので、初期の〝青の時代〟と〝キュビスム〟の作品を予備知識なく観たら同じ画家が手掛けたとは到底思えないでしょう。


 個人的にはこれまでずいぶんピカソ作品を観てきて、だいたい知っているつもりでしたが今回初めて知った、もしくは見落としていたことがありました。


 キュビスムはピカソたちがセザンヌに影響を受けて確立していったものだそうで、セザンヌを彼らと結びつけられず一緒に行った友人とびっくりしました。


 印象派とか象徴派とか今の時点から振り返ると絵画の変遷の100年がギュッとしているのでごちゃ混ぜになってしまっているからでしょう。セザンヌの静物は物を多視点で捉えていますが、一応人物も水差しも割と見た目でそれと判断できる具象なので、どうしても印象派のような気がしてしまっていました。


 もうひとつびっくりしたのは作品ではなく〝静物〟の英語と仏語の表記です。英語の〝still life〟は、なるほどでしたが仏語の〝nature morte〟は直訳で〝死んだ自然〟。確かにそうですけど、何だかちょっと怖い気がしました。


 そして、新しい絵画をピカソとブラックの2人がお互いに影響を与えながら実験・研究していたということにも驚きました。会場には油絵だけではなく、リトグラフなどの作品もあるのですが、名称プレートを隠したらどちらの作品かわからなくなるほど似ていました。ピカソは独善的で一人で新しいアートをどんどん創り出していったと思っていたので、彼の別の一面を知れたのは収穫です。


 後に続くアーティストによっていろんなキュビスム作品が生み出されたのがわかる展示でした。



 古典的な作品は描かれている神話とか歴史的な背景に隠された内容を読み解こうとしがちですが、これのどこが顔で手にしているものは何かと推測しながら観るのが面白く、解釈に縛られなくて楽しめました。会場には子供連れや若い人たちが多く来ていたのは素直に観たものを楽しめるからかもしれません。