坂本龍一といえば、やはり『戦場のメリー・クリスマス』(1983)や最後となった『怪物』(2023)といった映画音楽か、80年代に一斉を風靡したYMOの音楽家のイメージですが、初台にあるオペラシティー・タワーにあるNTTインターコミュニケーション・センター (ICC)の『坂本龍一トリビュート展』(〜3/10)はどんなものなのか、やはり気になっていたという友人と行ってみました。



 まず会場に辿り着くのが大変で、出口を間違えて地上に出てからビルをめざすことになってしまいました。しかも中に入ってから複雑で4階へ単純にエレベーターかエスカレーターで行けない構造でした。待ち合わせにちょっと遅れてしまいましたが、チケットを購入していざ展示室へ。ここでさらに5階へ行かなければならないのですが、選択したエレベーターが4階と5階のみという仕様でした。やっと着いた会場入口。いったいどんな展示なのか。音楽を展示はできないから彼のこれまでの仕事の数々が遺品とか写真、映像作品などが並ぶのだろうと思っていました。確かに李禹煥のペインティング作品とか関連作品がありましたが、会場になっているICCとの仕事を中心にした構成らしく、まったく知らない坂本龍一の世界でした。


 各国の人々に収録してもらった〝sound〟を再構築していくというプロジェクトに参加した人の中にはタイの監督アピチャートポン・ウィーラセータクン(タイ人の名前は長い)がいたのですが、彼の映画に自分だけ聴こえる破裂音に悩まされるティルダ・スウィントン演じる主人公が出てくる音を中心にした『MEMORIA メモリア』(2021)があります。これは実際に監督が経験した症状が元になっているそうです。音に思い入れのある人とつながって制作したのですね。


 展示を観たり聴いたりして、ふと音は流れているのに聴く気がないと排除され、また一瞬で聴こえてくることもありますが、見ることより無意識に左右されるのかもしれないと思いました。


 壁一面の映像作品では、映像に音を合わせるのではなく、どうやら映像も製作過程でAIを使って制作されていたようです。


 早くからコンピューターと関わってきた〝教授〟のさまざまな仕事の様子を見ることで一般に聴き慣れた音楽というかたちだけでなく、音の集合体という側面を考えることができた時間でした。


 ただ、会場内でそれぞれヘッドフォンを着けて5人づつくらいしか鑑賞できない映像作品は結構長く、事前予約しないと座席数が少ないので私たちは見ることができなかった別の小さなホールで上映されている作品もあるので、コンプリートしたい場合は要注意です。