南青山の骨董通りを行った先にある紅ミュージアムは、江戸時代から続く〝紅屋〟「伊勢半本店」が運営する資料館です。いわゆる口紅ですね。



 時代劇や浮世絵に描かれた美人画で小さな皿を片手に小指や筆で紅をつけているのを見たことがありますが、その実物が今も造られているとは数年前まで知らなかったです。原料は可愛らしい黄色い紅花。この花からあの赤い色ができるのが不思議ですが、さらにびっくりなのができあがった紅を小さな皿に薄く均一に塗ると美しい光沢の緑色になることです。初めて見たときは頭の中にはてなマークが飛び交いました。


 小皿の口紅が今も売られているというのを知って検索し、辿り着いたのが紅ミュージアムです。この小さなミュージアムの1階には製造過程や見本などがパネルや模型で紹介されています。また、化粧の歴史がわかる展示もあってコンパクトにまとめられていて見応えがあっておもしろいです。


 地下に企画展のスペースがあり、今回はその展示が気になったので、まず足を運ぶことのないエリアに友人を誘ってようやく行ってきました。


 『企画展「ミニチュア愛(らぶ)!」』(~4/7)は雛道具研究家の川内由美子氏の「川内コレクション」〈雛道具研究家〉を中心に信じられないクォリティーの道具類が並べられています。何しろミニチュアなので展示スペースは大したことはないのですが、一つひとつじっくりと見てしまうのでずいぶん時間がかかりました。単に小さいだけではなく、実際に蓋をはずせるとか戸を開けるなどできますし、漆塗りの蒔絵が施されている揃いの器など、まずそれを削ったり塗ったりする道具から造らなければならないと思うと気が遠くなります。今の時代のような拡大鏡があるわけでもないのにいったいどうやって同じサイズに揃いの模様を描き込めたのでしょう。切子細工のガラスの器はドワーフたちが手掛けたとしか思えない精巧さでした。明治以降の作品にあった焼物なんて、焼くと何割か縮むということも考慮しているわけでしょうが、土瓶のあの注ぎ口はどうやったのでしょうか。それに雛道具を専門に製作していた店が成り立っていたというのもすごいです。



 展示の最後には昭和の家電まであり、子どもの頃、キャラメルよりむしろおまけ目当てで買ってもらってずいぶん集めたミニチュアを思い出しました。捨てずに取って置きたかったなぁと思いました。コレクターである川内氏自身の作品までありました。ここまでくると単なるコレクターの域を超えていますが、多くのこんな可愛らしい作品を集め、研究しているその情熱がすばらしいです。