何も疑問に思わず観に行こうと!とチェックしていた『大吉原展』(〜5/19)。始まる前に大炎上していました。何が起きているのかとニュースを読むと、女性が売られてきた場所であるのに当時の最先端の流行発信地で新しい芸術が生み出されたという観点からの展示はいかがなものか、しかも東京藝術大学大学美術館で開催というのが問題視されたようです。



 これまでも浮世絵など江戸文化の展覧会で吉原の存在は避けて通れないものでしたが、その場所に焦点を当てた企画はおそらくなかったので、何となく人権侵害・女性虐待については曖昧なままでいた気がします。それを真っ向から取りあげた今回の企画は、確かにかなりの問題提起ではあったと思います。開催前からの賛否両論があるなか開催が決行され、いったいどんな構成なのかますます気になって平日に行ってみました。


 桜は散り始め、ケヤキの新緑が美しい上野公園を通って久しぶりの藝大美術館。チケットを買うのに並びましたがとくに混んではいず、入口で紙チケットをもらって(これは申告しないともらえません)音声ガイド機もレンタルして、いざ会場へ!まず現代アーティスト福田美蘭が描き下ろした作品がありました。最初のフライヤーにも使用されているのですが、薄いモノクロの浮世絵の上にタイトルロゴを大胆にあしらったもので、ロゴからインスピレーションを受けたという経緯があるそうです。その先に吊り下げられた画面にドーンと確か〝本展に吉原の制度を容認する意図はありません〟とありました。これは最初からこの文章が展示されることになっていたのかはわかりません。ただ、HPに今もある〝そもそも芸能の空間でしたが、売買春が行われていたことは事実です〟という言い回しは、やはりちょっと引っ掛かりますね。


 さて、一枚の浮世絵だけでなく、屏風や読み本などさまざまなかたちで吉原の遊女や周辺の人々が描かれた展示作品を観れて、これまで思っていなかった角度から考察できたのが個人的にはとても興味深かったです。


 3階の展示は町の雰囲気をちょっとだけ体感できる構成で、奥に再現された模型(これは撮影可)でさらにイメージしやすくなっていました。気づくと結構混んできていて、何となくの感覚ですが年配の男性が多い気がしましたし、外国人も割と来ていました。話題になったことで普段あまり美術館に来ない人が訪れて、多様性とか昔の人のものの考え方などを友人と語り合ったり、まだ観ていない人に感想を言って考えるきっかけになるかもしれないなと思いました。


 それにしても昔の人は庶民でもあの小さなミミズのような文字が読めたのがすごいですし、よくここまで摺物として町の様子や人々の表情、仕草をほぼオールカラーで残してくれたものです。


 少し前に朝井まかての『落花狼藉』を読んだのでさらに楽しめました。


 行く予定なら解説文も多いので時間もかかるので余裕を持って、なるべく休日は避けるか混雑を覚悟したほうがいいです。