たぶんモネと同じくらいマティスも日本では人気らしく、2023年に東京都美術館で『マティス展 Henri Matisse: The Path to Color』が結構長く開催されていました。でもマティスだけというのが正直惹かれていなかったので行きませんでした。今度は国立新美術館で『マティス 自由なフォルム』(〜5/27)が開催中です。今回行く気になったのはヴァンス礼拝堂を再現しているコーナーがあるというのを知って興味がわいたからです。



 かなり単純化されたフォルムや鮮やかな色彩のマティスはあまり考え込まずに観て明るい気分になれる気がしますね。本人のプロフィールもこれまで気に留めていなかったのですが、父親に言われて弁護士をめざしていたのに病気療養中に母親からもらった絵具で絵画に目覚めたという経緯があって、確か他にもそんなエピソードの画家がいたような。


 マティスは望む美術学校には入れなかったのに教官ギュスターヴ・モローから特別に個人指導を受けることができ、それが型式ばった教えではなかったのが、後のマティスの画風に表れているそうです。確かにモローが先生なら自由度が高そうです。モロー自身も学校の規格からはみ出ていたようですから。


 野獣派と言われることが多いマティスですが、ピカソのようにいろいろな描き方をして短期間で画風は変わっていき、油絵の『ダンス(Ⅱ)』が有名ですが、体力がなくなってからは線を引いて塗らなくてもいい「切り紙絵」の制作手法になり、『ジャズ』などの作品がありますが、今回はメインビジュアルに使われている『ブルー・ヌード』が来ています。



 「切り紙絵」がメインで構成された展示で、目玉は最近修復された『花と果実』。圧巻でした。また司祭が白衣の上に着る式服の実寸のデザイン画がユニークで、どちらかというと暗くて厳かなイメージだった式服のカラフルさに驚かされました。このデザインなら再現された礼拝堂に合いますね。その空間は一日の移り変わりを光で表現していてとても綺麗でした。ヴァンス礼拝堂は23年の展覧会では4Kの映像で上映されていたそうですが、やはり臨場感たっぷりの4Kも美しいですが、実物大なので実際にその空間にいる感じがしてよかったです。ゆっくりその雰囲気を味わっている人が多くいました。


 他にバレエの衣装も手掛けていて、マリー・ローランサンもそうでしたが、当時バレエは人気のエンタメだったのですね。時代の流行にも関わっていたのもわかりました。これまで知らないマティスの作品をいろいろ観ることができて、やはり展覧会に足を運んでみるべきだとつくづく思いました。