車両の円窓がかわいい丸の内線に乗って、中野坂上駅で下車。地図アプリで見るより、かなり狭い道をどんどん下って、途中カクカク細かく曲がった先の住宅地の一角にあったギャラリー。そこは東京工芸大学の国内外の優れた写真作品を展示・収集・研究する常設施設だそうで、誰でも見学できます。
今展示されているのが、インパクト大の名前の写真家の展示『土門拳展「祈りの風景〜土門拳自選作品集より」〜写大ギャラリー・コレクション〜』(〜6/1)です。
〝土門拳〟というとやはり仏像を連想します。今回の展示にも数枚ありました。70年代によく名前を耳にした覚えがありますが、当時はさほど写真に興味がなかったし、かなり頑固な怖い人という印象で作品をちゃんと鑑賞したことはありませんでした。ただ断片的な情報から、ずっとモノクロの仏像や寺社などを撮り続けた職人気質のカメラマンだと思っていました。
たまたまスマホに流れてきた案内で、これは一度ちゃんと観てみようかなと思って出向いたのですが、やはり実際に見ることができて良かったです。
降りたことのない駅から、ひしめき合った民家の庭先や玄関前の時期の草花や新緑の庭木を眺めながら迷路のような細い道を歩くという未知の世界へ入っていくワクワク感も味わえるおまけ付きなのも面白かったです。
危うく通り過ぎそうになった大学の建物の中の写大ギャラリーはそれほど広くはなく、2部屋に別れているのですが最初の小部屋にあったのはカラーの風景写真でした。まあタイトルに「祈りの風景」とあるので当然ですが、そこは失念していて草花の接写とか自然を撮ったカラー作品だったのは意外だと思ってしまいました。60年代の作品が中心ですが、こうしてきれいなプリントで見るとそんなに昔の作品に見えないし、強いイメージの作品ばかりと思い込んでいたので、ちょっと構えていた肩の力が抜けました。
次の部屋の正面の壁にアップの仏像写真がありました。それほど大きくはないですが、仏像をアップで切り取っているというのは当時あまりなかったのではないでしょうか。まるで人間の肖像写真のようで、木仏が生きているような温かみが感じられました。
こうしてみるとカメラマン本人に対する勝手な思い込みをせず、気になる作品に直接向き合うのは大切だなと実感。もちろん写真に限らず作者を知るのも作品に出会うきっかけになりますが、作品を前にすることで何かを感じる瞬間を持てるのがいいなと思いました。