〝世紀末〟というと、やはりついこの間の20世紀末ではなく、19世紀末をイメージします。そして〝世紀末=退廃〟というフレーズも浮かびますが、私のその発想は絵画作品からの影響なのだろうと思います。
今年は「日本・オーストリア外交樹立150年記念」として、19世紀末を彩る展覧会がいくつか公開されています。
東京では終了しましたが、大阪で開催中の『ウィーン・モダン クリムト・シーレ 世紀末への道』は多角的に当時を垣間見せてくれる趣向になっているのが、先に公開された『クリムト展 ウィーンと日本1900』とは大きく違っているところでした。
今回も中心になっているクリムトの絵画作品はいくつもありましたが、彼に関する写真、親しかった女性の半生など、当時の女性の生き方や彼を取り巻く人々のことも見えてきます。クリムトが臨終の際に呼んだエミーリエは時代の最先端をゆく女性だったことや、クリムトはかなり女性にモテていたのかということもわかりました。子供も10人以上いたようです。
また、皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の統治下のウィーンが、近代的首都として変貌する様がわかりやすく展示されていました。旧市街を囲む城壁が壊されてリンク通りとなり、美術館や劇場などの公共建築物が次々と建てられていったことが、写真や設計図、模型で展示されています。新しいデザインの室内インテリアや食器などは今のものと言ってもおかしくなく、生産されているものもあるようで、それほど遠い時代ではないと改めて感じました。特に美術展のポスターや店の宣伝カードなど、とてもスタイリッシュでユニークなものが多く古めかしさを感じませんでした。それにクリムトの人生だけでなく、シーレやオットー・ワーグナーらクリエーターたちの交流をいろいろ想像できておもしろかったです。
それとどうしても絵画作品からしか時代を考察しないことが多いなか、最近では会場で借りる音声ガイドで当時の音楽が流されたりもするので、この曲が流行の先端だったのかと知ることができるのもありがたいです。
『クリムト展 ウィーンと日本1900』では美術館セセッシオン(分離派会館)の壁画「ベートーヴェン・フリーズ」が再現され、着想を得たベートーヴェンの交響曲第9番が流れるなか鑑賞できるという、何ともぜいたくな空間を体験できました。
ところで、音声ガイドを借りる分、料金が高くなるのでいつも前売り券を入手するようにしています。うまくするとチケット屋でさらに安いのを入手できることもあるので、何軒かお店をチェックするのも大切です。
正規の前売り券も早割で特典つきのもよくあるので、先々の展示情報も逃さないようにと思っても、すでにソールドアウトしてしまうことが多く、まだまだアンテナの張り方が弱いようです。