「生け花」というのは昭和の幸せを手にするための花嫁修行のひとつで、年頃の娘が修得すべきというイメージがあり、若い頃は逆にそんなことに縛られたくないと思っていました。でも、大人になると花を生けることに次第に興味を持つようになって、機会があればやってみたいと思うようになりました。そして実際に始めたら考えがずいぶん変わりました。


 習い始めは枝1本切るにも勇気が要りましたが、今ではバシバシ切れます。とはいえ、先生の意見を伺いながらですが。この自然の造形物を使って新しい空間を演出するのは、やってみるとなかなかおもしろいものだとやっと最近思い始めましたが、まだまだです。


 私が習っている華道の3大流派のひとつ、草月流は花以外のものを積極的に使う現代アートという感じです。『世界らん展』でもこの3大流派の家元の大作が、ドンと活けられていましたが、草月の家元の作品は毎回竹をふんだんに使っていて迫力があります。


 初めて草月の「いけばな展」を見たときは、その作品の多さだけでなく思ってもみなかった素材を使っていたり、とんでもないかたちの生け方に衝撃を受けました。花は一切使わずにタマネギの茶色の薄皮だけとか、赤いトウガラシをぎっしり敷き詰めたりとか、花材を黒く着色したり、花器を使わないとか。それに家元の作品はもはや建築物のような大きさだし、何でもありなんだなと思いました。つまり、これらアバンギャルドな作品を含めた生け花というのは、すべて3〜4日の短い期間限定のアートなのだと思い至りました。





 今、不急不要の外出をしないよう繰り返し言われてストレスがたまるなか、FacebookなどのSNSでは季節柄でもありますが、花をアップする人は多いです。やはり花を見たり飾るのは気分がいいもので、それだけで免疫力がアップしそうなので、こういう何かを愛でることは必要なのだとつくづく思います。