今の職場の影響で医療系の映画に以前より目がいくようになった気がします。と言うことで実話に基づく作品から、まず製薬会社が多少絡む2本。
マシュー・マコノヒー主演の『ダラス・バイヤーズクラブ』(2013年)。ちょうどこの頃、作品ごとにまったく違う人物を演じていた彼の出演作品が何本か公開されて気になる俳優でしたし、この作品でアカデミー賞主演男優賞候補にもなっていたのでチェックしていました(日本公開後受賞)。この作品ではコチコチの差別主義者で女好きのテキサス男で、1985年当時ゲイの病気とされていたエイズに罹ったことで荒れ狂い、やがてトランスジェンダーと組んで国内では手に入らない薬をメキシコから入手して捌いていくうちに彼自身が変わっていく話でしたが、アメリカの医療の仕組みを少し知ることができました。でも個人的には、ガンガン流れるドアーズの曲が彼に影響していると思えるところが気に入っています。
『小さな命が呼ぶとき』(2010年)は〝ポンペ病〟という難病に冒された娘たちの父親がこの病の権威である博士とともにベンチャー企業を起こし、新薬を開発するというものでした。希少な病のための薬だけでなく、ひとつの薬を作り出して、製品として普及させるのにどれだけの時間と資金、技術などがかけられて、そこにさまざまな立場の人々の思惑が絡んでそう簡単にできあがるものではないということを垣間見れました。クセの強い研究者をハリソン・フォードが演じていておもしろかったです。
日本映画ではかなり地味で教育的ですが、医学に貢献した日本人を描いた作品を観ました。
『さくら、さくら』(2010年)は消化剤〝タカヂアスターゼ〟を発明した高峰譲吉の物語で、世界で初めて〝アドレナリン〟の結晶化を成功させた科学者であり、研究開発を産業と結びつけた実業家だったそうです。もう1本は『うさぎ追いし―山極勝三郎物語』(2016年)やはり江戸時代に生を受け、明治・大正時代にがん研究の世界的先駆者だった人物の話です。主演の遠藤憲一のあの風貌でうさぎを抱いている姿のギャップもよかったです。戦前の日本にこんな人たちがいたというのを知りませんでした。今のように何でも揃っていない時代にここまで打ち込む人がいたのですね。
環境が変わると興味の対象が広がって、楽しみが増えるのもいいものです。