国立博物館で2018年に開催された『縄文―1万年の美の鼓動』はとても楽しみにしていた展覧会でした。子どもの頃、教科書で見た遮光器土偶はどう見ても宇宙人だったし、火焔型土器は意味がわからないと思っていましたが、その実物がどーんと一挙に展示されるのですから、見逃すわけにはいきません。想定どおり、さすがに一緒に行ってくれる人はいなかったので単独で上野へ。まぁ大抵1人なのでいつものパターンです。
以前、旅行先で〝縄文の女神〟を観ましたが、これが1万年以上昔の人の創作したものなのかととても不思議でした。この展覧会では〝縄文の国宝〟が6点集結!うち5点が土偶で〝ビーナス〟に〝女神〟揃い踏みです。全方向から見られる展示というのも素晴らしかったです。たくさんの土器だけでなく、装飾品、玩具のようなものも多数あり、どうしてこういうのを作ったのか、いろいろ想像させられました。その中で火焔型土器はどう考えても使うのに不便そうな装飾過剰な容器です。1つ2つだけ出土したというのなら、何か特別な催事に使うものだったかもしれませんが、ずいぶんあちこちからたくさん出土し、今回はずらりと展示されて、改めてその形状に驚かされました。まったく同じというのはなく、複雑な形状を作るのも焼き上げるのもそう簡単ではなさそうです。
あの奇妙な模様は本当にいくら見ても飽きません。実はその火焔型土器と思われるかけらを持っているのですが、それだけで結構な重さがあります。実際火にかけられ、煮炊きか何かに使われたようですが、さらに重たかったはずです。例えば、この模様に込められた何かが料理する食材に力を与えていると信じていたとか、いや単にこんなのが作れたと競い合っていたのかもなどと想像が膨らみます。
会場には世界の土器も展示されていましたが、弥生時代の土器のような実用に適した形のものばかりで、火焔型土器タイプはありませんでした。縄文時代は世界的にも珍しい時代だったと最近海外で注目されているようですが、こんなとんでもない発想をした人々が1万年もの間、日本列島のあちこちにいたと考えるだけで楽しいです。同時期に公開されていたのをあとで知ったドキュメンタリー『縄文にハマる人々』を見損ねたのが何とも悔やまれます。
展覧会は終わってしまっていますが、博物館の常設展示もありますし、お茶の水にある明治大学の博物館へ行けば、少しですが土偶や土器を無料で見ることができます。ここは刑事部門の拷問道具で知られていると思いますが、考古部門もなかなかです。企画展もあるし、空いていてゆっくり見ることができてオススメです。