ついに原宿の駅舎が解体されます。一部資材を再利用して旧駅舎の外観再現するらしいですが、時間によって刻み込まれた雰囲気は消失してするわけで、こんな形だったという殻のようなものになるでしょう。でも、それはどうしようもないことです。




 さて、この若者が新しい表現を生み出してきた原宿にはまったく反対のいかにも日本文化の代表と言える浮世絵を専門の美術館が、ラフォーレ原宿の裏手にあります。


 原宿によく行っていた頃、このちょっと民家にも見える太田記念美術館に浮世絵が展示されているのをまったく気づいていませんでした。何しろそれがわかる名前ではありませんから、日本美術の書とか焼物の展示だろうくらいにしか思わず、何となく気にはなっていても実際に入ったのは多分ずいぶん後になってからです。



 浮世絵なんて子どもの頃はお茶漬けの素のおまけカードとしてしか知らずにいたのですが、江戸時代に分業体制が整って、庶民が手軽に手にすることができるこれらのいわゆる錦絵は、あの写楽の誇張された役者絵や春信の可愛らしい女性たちに北斎のさまざまな情景の富士だけでなく、実にいろんなジャンルの絵があって、今の時代に置き換えると「報道写真」「絵本」「ブロマイド」「観光写真」「カレンダー」「おもちゃ」などのあらゆる紙媒体であるというのを知ってからは興味が湧いて見るようになりました。実用的なすごろくやお芝居の舞台などを再現できる組み立て立版古(たてばんこ)や団扇、昔の暦に至っては今流行の謎解きパズルだし、江戸の人々の生活のあらゆるところに浸透していたのはすごいなと思います。



 太田記念美術館は2004年に改修される前はまず靴を脱いで入らなければいけませんでしたが、今は一部畳のあるとこ以外は靴のまま鑑賞できます。吹き抜けで2階が回廊になっているので割と広々としているし、真ん中には石庭があるのが面白いです。地下の展示室を使うこともあるので、点数も結構あっていいです。


 ここ数年最新のファッションと古い文化を同時に楽しめるので、外国人観光客でかなり賑わっていたようですが、さすがに今はほとんど見かけません。予約制ではなく、時間によっては混まないようなのでゆっくり楽しめます。『月岡芳年 血と妖艶』(後期)が10月4日(日)まで開催中で、行けない人のためにYouTubeチャンネルでも公開しています。