六本木駅から、雨の日でも猛暑日でも地下通路で行ける美術館がサントリー美術館です。ブランド店が並ぶ商業施設の3階の一角という立地で、高級品に縁のない身にとって実は少し足が向きづらいところでもありますが、入口はあまり気負わないで入れる雰囲気なのでなんとか行けます。


 今、リニューアルオープン記念の第2弾として開催中の『日本美術の裏の裏』はちょっとハードルが高いイメージの日本美術を鑑賞初心者にとって、まさにうってつけの展覧会です。もっと早くこういう展覧会に出会いたかったと思いました。



 入るとすぐに透けた布がいくつもあって、それを避けながら進むことで、幽玄の世界へ迷い込んだような気にさせられ、まずそこで円山応挙の水の奥行きが感じられる「青楓瀑布図」が出迎えてくれます。気づくと京都あたりの屋敷に入るような襖の仕切りがあって、その先にまるでそこに草花があるような屏風が展示され、いよいよどこか別の空間に来た気分になります。ここで足元にも目を向けるといいです。



 どの作品にも鑑賞の仕方のアドバイスが書かれていて、昔の人たちがどう見ていたのか、作品の隠された意味合いとか、謎かけがわかる人だけ楽しめる仕掛けがあるなど、勉強になりましたし、単に野々村仁清や谷文晁とか有名人の作品を知ったかぶりで眺めなくても、自分なりの感じ方で解釈すればいいというのがわかりました。中にはどう見ても下手な絵だけど、そんなことより内容や雰囲気を楽しめばいいし、こういう作品が残っているということは、達筆にだけ価値を求めていなかった昔の人の価値観というか、ものの見方、楽しみ方を知ったのも発見でした。



 書画、焼き物、工芸品と数はそれほどでもありませんが、満足できる展示で後期に入れ替えがあるのでちょっと気になる展覧会でした。また、会場のあかりによるちょっとした〝遊び〟やデジタル処理された動く絵画も面白かったです。全作品写真撮影可です。ビルの一角なのでそれほど複雑な構造ではないし、天井も高く、比較的ゆったりとした空間なのもいいです。



『日本美術の裏の裏』10月26日まで前期、10月28日〜11月29日が後期です。