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特定保健用食品(トクホ)

2023/07/13 会員限定記事

言葉が動かす医薬の世界 26

 05年の一般用医薬品市場は約6200億円、前年より▲3%と推定されている。一方、特定保健用食品の市場規模は約6300億円、03年に比し11.1%のアップである。一般薬市場がここ5年間連続的に縮小しているのに比べ、特定保健用食品市場は同じ5年間に倍増し、一般薬市場と肩を並べた。恐るべき市場変化である。


 ところで、特定保健用食品(トクホ)とは何を指すのだろうか。


 今日、販売されている食品については、健康食品、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、特別用途食品などの用語が氾濫しており、素人にはまったく見当がつかない。これらのうち、太字で記した用語は法令に基づき規定された食品である。それ以外は法令上定義されていない通称語である。つまり、販売業者が独自の判断で「健康食品」などと称して販売しているものだ。


 ちなみに、これらすべてを含めた、いわゆる健康食品市場は正確な数字はないが、2兆5000億円程度と推定されている。


 トクホと栄養機能食品は「保健機能食品制度」により規定されている。保健機能食品制度は従来、多種多様に販売されていた「いわゆる健康食品」のうち、一定の条件を満たした食品を「保健機能食品」と称することを認める制度で、01年4月に施行された。本制度は規制緩和の動きと国際的な食品規制状況を取り入れ、医薬品として規制していたビタミン、ミネラルなどを食品として自由に流通でき、錠剤、カプセルなどの形態を食品として認めた画期的な制度改革であった。



 トクホは特定の保健の用途に資することを目的とし、健康の維持、増進に役立つまたは適する旨を表示することができる。製品ごとに安全性や機能について国の審査を受け許可される。個別許可型と呼

ばれ、現在579品目(06年2月)が許可されている。


 トクホの保健の用途としては整腸、便通改善、血糖値関連、血圧、コレステロール、中性脂肪、歯・骨、ミネラルの吸収などが挙げられる。その用途別売上構成は整腸関係が6割弱、歯および中性脂肪・体脂肪関係が1.5割を占めている。最近、成長が著しいのはコレステロール、血圧、体脂肪関連食品で、今後これらは急速に拡大すると予測される。流通経路は、スーパー・デパート42%、戸配30%、コンビニ15%がメインとなっている。


 栄養機能食品は規格基準型とされ、当該栄養成分が規格基準(1日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量)に合致していれば自由に製造販売できる。個別審査を受けたものではない。栄養機能の表示(例‥カルシウムは骨や歯の形成に必要な栄養素です)を行う場合は注意喚起表示もしなければならない。これは薬の「適応と使用上の注意」に類似している。


 なお、「特別用途食品」とは病者用食品、乳児用調整粉乳など「栄養改善法」による食品である。


 トクホが制度化されわずか5年で、健康食品ブームと相俟って一般薬と同じ市場規模に成長。トクホという言葉の影響力は大きい。薬と食品の機能と役割が改めて問われなければならない時と思う。


神原秋男 著
『医薬経済』 2006年8月1日号

2023.07.06更新