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基準薬局

2023/08/03 会員限定記事

言葉が動かす医薬の世界 40

 街の薬局をみると「基準薬局」という看板(青十字マーク入り)がよく目につく。大きな調剤薬局には大概、同じ基準薬局という看板があるので、厚生労働省か保健所の規定で付けられているのかと思う方も少なくないようだ。


 実は基準薬局とは厚労省も保健所も関係なく、日本薬剤師会(日薬)が「都道府県薬剤師会認定基準薬局」制度を制定し、運用しているもので、1990年4月1日から実施された。日薬が、定めた一定の基準を満たしていることを都道府県薬が認定した薬局が該当する。現在、保険薬局数は約5万薬局あるが、このうち基準薬局として認定されているのは1万8930薬局、認定率は37.9%である。この認定率は都道府県によってかなりのバラつきがある。


 今般、日薬は今までの認定基準を全面的に改定し、新しい「認定基準」を決定。4月1日から施行することになった(本欄で「基準薬局」という用語を取り上げたのはそのため)。新しい認定基準の内容は、①保険調剤、②薬局の体制整備、③一般用医薬品の供給、④地域貢献、⑤薬剤師、⑥その他ーーに整理され、全体で30項目になっている。その内容は、

①責任を持って処方せんを調剤しているーー保険薬局の指定を受け、処方せんに基づく調剤、薬暦管理、服薬指導等を適切に行っている。各種公費の取り扱いがあり、麻薬小売業者の免許を取得している。患者の後発品選択に対応できる体制を整備している。

②医療提供施設として適切な体制を整備しているーー地域医療体制に対応した開局時間・曜日であり休日・夜間対応の適切な措置を講じる。在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨の届出、医療安全を確保する体制を整備する。医薬品等の品質管理、情報収集のためのIT環境整備。使用済み注射針等の回・廃棄の適切指導。薬局内の全面禁煙とタバコを販売していない。

③医薬品の供給拠点として一般用医薬品等を販売し、その販売方法が適切であるーーセルフメディケーション支援に必要な一般用医薬品等を販売しており、薬剤師が情報提供・相談対応を行い、必要に応じ受診勧奨を行う。一般用医薬品の適切な陳列、対面販売、名札・着衣による薬剤師の明示、店舗内外に必要事項の掲示を行う。地域の保健・医療・福祉に貢献する薬局として信頼される販売姿勢に留意する。医療機器の供給、毒物劇物一般販売業の登録。医薬品製造販売業の許可の取得が望ましい。

④地域の保健・医療・福祉に貢献しているーーくすりの啓発活動、薬物乱用防止、学校薬剤師活動などに貢献。各種調査に報告・協力。

⑤十分な知識・経験のある薬剤師が勤務しているーー管理薬剤師は保険薬剤師として3年以上経験。「薬剤師倫理規定」遵守。研修会参加。

⑥その他ーー薬学生の実務実習に協力。災害時の救援活動への協力。基準薬局である旨を店外に掲示。


 以上、認定基準を見ると、かなり厳格で薬剤師が薬をベースに地域の保健・医療・福祉活動に真摯に貢献する姿勢が読み取れる。また、今回の改正は06年6月の改正医療法、一般用医薬品の販売制度改正、6年制薬学教育などの変化に積極的に対処している。店内全面禁煙、タバコ販売の禁止は一部に反発もあろうが、ニコチンガムを扱う薬局として当然であろう。使用済み注射針対処、災害時活動などには新鮮味もみられる。


 基準薬局という言葉を通して、日本の保険薬局は大幅にレベルアップした。読者の皆さんは「基準薬局」を訪ねた折、その対応状況を注目されるといい。


神原秋男 著
『医薬経済』 2007年3月1日号

2023.07.12更新