澤充・日本大学名誉教授
宮浦徹・日本眼科医会理事
なぜ、男性に色覚異常が多いのかといえば、これは「1型」「2型」の色覚異常がX染色体連鎖劣性遺伝により発現するものだからです。男性はX染色体とY染色体を一つづつ、女性はX染色体を二つもっています。つまり、女性であれば片方のX染色体に異常があっても、もう片方が正常であるために発現しないのですが、男性ではX染色体は一つですから、異常があれば発現してしまうわけです。色覚異常の有病率の 性差は、このような事情で生じています。
さて、ヒトは加齢により色の認識力が発達していきます。生後5ヶ月では青、青緑、橙、赤、赤紫、青紫しか認識できませんが、2歳になると色名呼称と色合わせができるようになり、これは4歳までに確立されます。色の認識がピークとなるのは20歳前後で、40歳以降は加齢による水晶体の着色(黄色)による短波長(青)の認識が低下していきます。このような色の認識力の発達過程から見れば、色覚異常の検査についていえば、就学時に行うことで「色覚異常の疑いの有無」は見分けられるといえます。
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「男性の20人に1人は色覚異常」
「錐体細胞の欠損及び異常により色覚異常は起きる」
「そのほとんどは先天的なもの」
「色覚以外の視機能には全く異常はない」
——以上が色覚異常の基礎知識だ。ではこうした色覚異常の検査が、学校健診で行われなくなった結果、どのようなことが起きたのか? 先天色覚異常の受診者に関する実態調査を紐解きながら講演したのは日本眼科医会の宮浦徹理事だ。演題は『学校での色覚検査について』
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色覚検査が小学校での定期健康診断の必須項目でなくなってから10年経ちました。その結果、どうなったのかといえば、教職員の色覚異常への関心は薄れ、学習及び生徒指導で十分に配慮されていないのが現状です。
平成13年10月の労働安全衛生法令改正に伴い、雇用時における色覚検査は原則廃止されました。現在は、進学や就職に関しての制限はほとんどありません。ただし、特殊な学校(航空、船舶、鉄道、防衛など)や職業(鉄道、バス、消防、警察、自衛隊など)では、現在でも色覚検査が残っています。これらの職業では、緊急時に色を正確に判別できなければ自他の生命に関わるためです。
こうした職業を目指す生徒が、自らの色覚異常を全く自覚しないまま進学、就職を目指し、受験する段階になって初めて色覚異常に気づき、被害を被る——。色覚検査が行われなくなってからは、こういったケースが増えて来ているんですね。
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運転手であれば信号や車両の色、消防士であれば被災施設や被害者の服、トリアージタグなどの色、パイロットや自衛隊であればレーダーや操作パネル、配線やマニュアルの特記事項の色——というように、その場その場で正確かつ瞬時に色を判別できなければ、文字通り生命に関わる。色覚異常では絶対に務まらない仕事といえよう。しかし、こういった仕事は少なからず“男の子”の憧れの仕事でもある。だからこそ、「小さいころからパイロットを目指して猛勉強し、いざ受験となったときに色覚異常が見つかり、15年来の夢を断念する」といったことが起きるのだ。