医薬経済社原稿
シリーズ『くすりになったコーヒー』


 2014年、「コーヒーを毎日飲む人はNASHになり難い」という論文が出たとき、ネイチャー誌に可笑しなマグカップが登場しました。解説記事をしっかり読んでもらおうとてか、カップの絵柄にヒト肝臓を描いて人目を引いたのです(第189話を参照)。そのネイチャー誌、今度は表紙がマンガになっちゃいました。




 このマンガが意図するところは、ネイチャー誌本来の糞真面目な編集方針。糞真面目が何故にマンガを描いたのか?答えは特集記事(表紙中央)にヒントがありました。


●INTERDISCIPLINARITY Why scientists must work together to save the world.


「サイエンスの異分野協力を進めないと、世界を救うサイエンスにはなり得ない」、ネイチャー誌の編集部はほんとにそう信じているので、お堅い中身の記事を異分野の研究者に読ませるようにマンガにしたというわけです。異分野の人に異分野の面白さや大切さを知って貰うには活字は無能、「マンガ」なのです。


 さて、ネイチャー誌は七人のヒーローを揃い踏みさせて、読者に何を気づかせようというのでしょうか?


【表紙説明の翻訳】『エネルギー、水、気候変動、食糧、健康といった、社会が直面する難問に取り組むには、自然科学者と社会科学者(訳者注:異分野の東西どうし)が一緒に仕事をするに限ります。保守的な学問の境界からはみ出すのはカッコ悪いし、研究費集めは不可能だと思っていませんか?本誌の特集で検証する中身は、政府、資金提供者、科学雑誌、大学とそこに居る研究者、みんなが殻を破ってINTERDISCIPLINARITY(訳者注:普通は「学際」と訳す)的に仕事をする必要があるんじゃあないですか?』


●「行けっ!七人の戦士たちよ!」


 とでも言わんばかりでありますが、INTERDISCIPLINARITYを実践すると何がどうなるのか、表紙の説明からはチンプンカンプンです。そこで本文を斜め読みしてみたのですが・・・・。


 結局わからないままですが、何故解らないかが解りました。


●近年流行のINOVATIONという単語が何処にも出てこない。


 そうなのです。INTERDISCIPLINARITY(学際)を実践するには、INOVATION(ぶっ壊してから作り直す)では困るのです。でもそれでは、古いものを残したまま、お隣さんとの地境で何か画策するみたいなものです。ですから本家のことが気になって、結局何もせずに、そのうち忘れられてしまいます。


●ネイチャー誌が本気の本気で殻を破れと言うならば、INTERDISCIPLINARITYとINOVATIONの地境用語を考えるべきです。


 このままでは、七人のヒーローたちは行き場が決まらず、取り敢えず全員揃って右向きに突っ走るしかありません。エイエイオーってか?


(第254話 完)


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