医薬経済社原稿
シリーズ『くすりになったコーヒー』


●オックスフォード・コーヒークラブの設立メンバーだったロバート・ボイル(気体の体積の法則で有名)は、大のコーヒー好きで、王立協会初代会員にも指名された(1650年頃)。


 前回、第252話でコーヒーハウスに触れました。その頃、コンパ場探しの学生たちに交じってコーヒーハウスの開店に尽力したボイルは、大のコーヒー好きでもあったのです。そういえばこの日本にも似たような話がありました。只で使える銀座のコンパ場を探していた慶大生に、夢を叶えてあげたのは永井荷風教授でした。場所は銀座のカフェ・プランタンの2階。以来慶大生は暇を見つけては銀座へ繰り出し、何も買わずにプランタンに入り浸っていたのだそうです。これが今言う「銀ブラ」の始まりでした(詳しくは →こちら)。


 話を元へ戻しましょう。オックスフォードのコーヒーハウス大盛況に刺激されて、ロンドン(当時はコーンヒル)にも続々とコーヒーハウスができました。ボイル教授がロンドン1号店のパスカロッセに入り浸っていた訳は、ここにケンブリッジ大からも錚々たる科学者と優秀な学生が集まってきたからです。ですからもう誰彼となく自慢話ばっかりで、「大英帝国は自分たちのもの」みたいな大騒ぎだったのです。そこでボイル教授は考えました。


●こんな騒々しいだけのハウスではなく、もっと大きくて立派な建物に欧州一の科学協会を作ろうではないか。


 オックスフォードとケンブリッジの教授たちが連名で、王立協会設立運動を起こしたのです。そして時の国王チャールズ2世から「Royal Society:王立協会」の設立を認められました。しかし、コーヒーの飲み過ぎによる体の変調を感じていたボイル教授は、コーヒーハウスで淹れるコーヒーは体に悪いから、もっと確かな道具を使って淹れなければならない・・・と考えるようになったのでしょう。そこで思いついたのが有名な「ロバートボイルの永久機関」でした(図)。




 ボイル教授が体に悪いコーヒーを飲みながら夢にまで見る機械を遂に思いついたのです。もうこれで真っ黒な煙を出す石炭なんか焚かなくても、勝手に永久に動き続けるブリュアーができる・・・?


●毛管現象で吸い上げた水が滴る永久機関でどうやってコーヒーを淹れるのか?


 結局ボイル教授は永久機関で淹れたコーヒーをこの世で飲むことはありませんでした。でもこの永久機関は、物体と物体の間で摩擦が生じることのないあの世で動いているのです。そしてボイル教授は、「摩擦なんて糞喰らえ」と嘯きながら、美味しいコーヒーを飲んでいるに違いないのです。


●毛細管の開口部付近の摩擦を消せば、永久機関はこの世のコーヒーブリュアーになるのである!


 えっ?誰が言ったの?


(第253話 完)


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