シリーズ『くすりになったコーヒー』


 詳しくは知る由もありませんが、「不老無病の妙薬」とはインド伝承医学用語の日本語訳のようです。その妙薬とは「あなた自身」であって、それ以外に実在する妙薬など存在していないとのことです。


●今日お話しする「無病の妙薬」は実在している。


 現代社会には2つの妙薬が伝承されて、世界の飲み物として確立しています。と言えば、多くの人が「コーヒーと緑茶」を思い浮かべることでしょう。その通り。国立がん研究センターの発表によれば、「コーヒーと緑茶は長寿サポート(5月7日朝日新聞夕刊;第241話も参照)」の飲み物なのです。


 図をご覧ください。この図は「人生の三大病態と人類の知恵」を現わした概念図です。三大病態とは、まったく健康な「無病」、漢方でいう「未病」、そして誰もがなりたくないと願っている「病気」の3つを指しています。次に3つの知恵とは、まずは「コーヒーと緑茶の発見」、中国で発祥し日本で育った「漢方薬の発明」、西洋生まれで病魔から命を救う「合成薬の発明」を指しています。




 「未病」と「病気」の2つの病態はよく漢方薬と合成薬(西洋薬)に当たります。しかし、「無病」という病態が、これら2つに先行する先制概念であることは知られていない・・・というよりも、当たり前すぎて誰も気にしたことがないということでしょうか・・・。自分が「無病」でいるうちに、毎日コーヒーか緑茶を飲む。そうすればやがて見舞われるかも知れない「未病」と「病気」に取りつかれずに済むのです。


●コーヒーと緑茶は「無病の妙薬」と呼ぶに相応しい。


 コーヒーの疫学研究がメタ解析の段階まで進んできました。日本でしか成立しない緑茶の疫学研究にも、一応の目安がつきました。コーヒーと緑茶の成分には共通点がありますし、その共通点はコーヒーと緑茶にしかない特別なもの(カフェイン+ポリフェノール)ですから、この2つの飲み物だけが「無病の妙薬」の資格をもつ掛け替えのない存在なのです。


 合成薬(西洋薬)と漢方薬の違いは、治せる病気の数にあります。


●合成薬には1:1で対応する「薬と病気の対応」がある。


 ですから合成薬が治せる病気は基本的には1つしかありません。漢方薬はそうではないのです。「ある病気になりやすい体質の人が、その病気になって、よく効く漢方薬で治りました。この人と同じ体質の別の人が、別の病気になりましたが、体質が同じということで、同じ薬を飲んだら別の病気が治りました。」


●漢方薬の効き目とは、病気になる体質に効く効き目であって、病気そのものに効くのではない。


 ですから、1つの漢方薬が治す未病の病態は1つではないのです。では「無病の妙薬」の場合はどうでしょうか?コーヒーとは実に日常的な誰にも愛される飲み物であることに注目です。その上で、「コーヒーと漢方薬」を比べてみれば、そのちがいがはっきり見えてくるのです。聞いてびっくりのちがいとは?下図を参照してください。




●古来、コーヒーも緑茶も漢方薬に入っていない理由は、漢方医にとってコーヒーも緑茶も漢方にそぐわないからである。


(第245話 完)


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