シリーズ『くすりになったコーヒー』
経済先進国の所得格差が広がっています。コーヒー販売価格には、値上げと値下げが混交しています。大雑把に高価格商品を拾ってみたら下の表が出来ました。
昨年9月、スタバ社は世界で限定2000袋の高額焙煎豆(パナマ産ゲイシャ種)を売り出しました。うち1000袋を日本向けとし、大阪と東京を中心に売り捌いたそうです。世界で売る2000袋の半分をこの日本で売ったのです。それはそうでしょう。アメリカやヨーロッパでこんなに高いコーヒーが売れるわけありません。日本っていいなあ!
スタバでは、これと同じ豆で淹れたコーヒーを1杯2000円で同日販売したそうです。一体どんな人が注文したんでしょうかねえ!? 価格に惑わされてついつい飲んでしまったんでしょうねえ。でもその程度で驚いては居られませんよ。
2〜3年前のことですが、軽井沢の喫茶店に、1杯1万円のコーヒーがありました。
話は飛びますが、国民の平均年間所得が10万円程度のフィリピン。都市部のカフェに1杯8000円のコーヒーがあるそうです。たった1杯で1ヶ月分の稼ぎに相当するコーヒーを平気で飲む人がいるんだそうです。そんな国で採れるコピ・ルアク(第193話を参照;表の価格はインドネシア産)は品薄もあって高価ですが、それを日本に持って来てもゲテモノ好きの人しか飲みません。
●所得格差が大きい国では、高いコーヒーが良く売れる。
なるほどなあ……この日本でも貧富の差が大きくなったからなあ……。
大阪八尾市のザ・ミュンヒでは1杯7万5000円の熟成樽入りコーヒーを提供するとのこと。こんなコーヒーは別格としても、日本の喫茶店では1杯1万円程度の高額メニューはあり得る話のようなのです。でも飲んで下さったお客様に使ったカップ&ソーサーをお持ち帰りいただくとかで、ボッタクリ罪を償っている気配も感じてしまいます。ちなみにリピーターは居ないみたいです。
何はともあれ客に割高なコーヒーを勧めるからには、抜群に美味しくなければ無理でしょう。「そこにしかない美味しいコーヒーを飲むためなら1万円は高くない」、「お持ち帰りカップ&ソーサーなんか無用です」と言わせるほどに美味しくなければなりません。表の川島フルボトルは、素人が淹れても「今までのなかでは最高」と感じられる仕掛けが施してあるそうです。そうでもなければ価格倒れになりますよ。
さて、現に1杯1万円のコーヒーにどれだけの価値があるものか、誰もが納得する答えはないと思います。ミカドの1万円コーヒーも現在のメニューには見当たりません。あるとしてもカップ&ソーサー付なら飲んでも仕方ありません。美味いと言われるネルドリップの達人が「家庭でネルドリップの普及活動」を始めましたが、家庭で飲めるようになれば、達人と雖も1万円を取ることはできなくなってしまいます。
●素人には絶対にできない、1杯1万円のコーヒーが飲めるお店を待っています。
(第229話 完)
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