シリーズ『くすりになったコーヒー』


 去る3月29日、パシフィコ横浜で開かれた日本薬学会で、「アルツハイマー病を予防するコーヒー」発表してきました。今回の発表は、HAB研究機構(詳しくは → こちら )の鈴木聡さん



 今回の薬学会ではコーヒーに関係した発表が8つもありました。これまでにはなかった盛況ぶりです。なかでも、お隣ポスターの田村先生の発表が前立腺だったことにはびっくりでした(写真右側)。発表によりますと、コーヒーは「前立腺癌の増殖を加速する」はずなのですが、疫学調査では「逆に抑制する」となっています。試験管内実験と疫学データが異なる理由は解りませんが、コーヒー研究ではしばしば経験するパラドックスです。また1つパラドックスが増えました。


 初耳だったのは、ドライアイ用の点眼薬ムコスタ(大塚製薬)とコーヒーの関係です(詳しくは → こちら )。有効成分の1つが涙鼻管を通って口に入ると、猛烈な苦味となって、気分が苛立って仕事になりません。そこで有効な方法は、ココア、みそ汁、コーヒーを飲むことなのだそうです。サラリーマンにとって、ここはやはりコーヒーでしょう。それも、ポリフェノールをいっぱい含んだコーヒーが効く可能性があるのではないでしょうか?


 ということで、もうお分かりでしょうが、市販のコーヒーのなかでコーヒー・ポリフェノールを最も大量に含んでいるのは、花王ヘルシアコーヒーなのです(詳しくは、第168話を参照)。この仮説が当たっていれば、大塚製薬さんも助かりますし、ドライアイの方には福音だし、コーヒーメーカーにとっては売り上げ倍増とまでは行きそうにないなあ・・・。


●もしかすると、苦いコーヒーを飲んでいると、やがて苦味に鈍感になるのは、単なる慣れではなく、苦味を感じなくなるコーヒー成分のせいかも知れない。


 この仮説は、コーヒーの新たな研究課題になりそうです。


 さて、問題の「アルツハイマー病を予防するコーヒー」ですが、そう難しく考えることはありません。コーヒーが生活習慣病を防ぐことは確かなことなので、糖尿病が原因のアルツハイマー病ならば、糖尿病にならなければ大丈夫・・・と言うことです。詳しくは又の機会と致します。


(第169話 完)


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【訂正】第168話 「COPD → 慢性閉塞性肺疾患」でした。お詫びして訂正します。



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