シリーズ『くすりになったコーヒー』


 第120話でコーヒーと癌リスクの話を書きました。そのなかで前立腺癌のメタ解析にも触れたのですが、コーヒーと前立腺癌の関係はいま一つはっきりしていませんでした。今年になってちょっと気になるデータが出てきましたので、メタ解析の追加データとして紹介します。


●コーヒーはグリーソン・スコア8〜10(10が最悪)の悪性前立腺癌リスクを下げる(詳しくは → こちら )。


 これは今年(2012年)に発表された論文ですが、他にもう1つ2011年にも似た論文が出ています。今回の論文は、以前のメタ解析論文に追加する内容と言えるものです。

 図を描いて説明します。



 この図は、1970年にイギリス人6017人を対象として始まった前向きコホート研究で、2007年末までのデータのまとめです。1997年から前立腺癌の悪性度診断にグリーソン・スコアが使われるようになり、新たに148名のスコアが測定されました。悪性度で分類すると、最も悪性度の高いスコア8以上が70名、7が38名、7以下が41名となりました。更に悪性度の分類ごとに1日に飲んでいたコーヒーの量で細分類して、棒グラフを色分けしてあります。緑はコーヒーを飲まない人の場合で、発癌した人数の割合を基準値1.00として描きました。橙は1日に2〜3杯を飲む人、赤は3杯以上を飲む人の相対リスクです。


 さて、図のデータを土台に、論文の筆者は次のように書いています。


●図から明らかなように、グリーソン・スコアが8以上の悪性前立腺癌に限って、コーヒーによるリスク軽減が認められる。


 これはかなり苦しい結論ではないでしょうか。図の右側だけ見れば確かにそうなのでしょうが、図の真ん中はそうではありません。統計学的に「有意差なし」なので無視するのでしょうが、そもそもグリーソン・スコアを測定した人数が少な過ぎたのだと思います。前立腺癌の重症度分類はグリーソン・スコアが実用化されて初めて可能になったので、今後の追跡調査でデータの信頼性が高まると期待できます。今はまだ調査進行中と言ったところでしょう。


 前立腺癌は早期発見すればほぼ確実に治せる癌ですから、50歳を過ぎたらマーカーのPSA検査をしておく必要があるのです・・・とか言う筆者も、コーヒーのお蔭なのでしょうか、悪性前立腺癌サバイバーの一人になっている次第です。


(第156話 完)


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