シリーズ『くすりになったコーヒー』


 2月11日(土)、「第2回分子状水素医学シンポジウム」へ行ってきました(詳しくは → こちら )。


 目的は、不思議な水素の効き目(第124話を参照)について、何か新知見はないものか、探ってみたかったのです。会場内は撮影禁止でしたので、北里研究所正門の立て看板だけ撮ってきました。会場内には、「もしかしたら革命が起こるかも知れない」というような空気が漂って、水素水業者が群がっていましたが、製薬会社の姿はなかったようです。



●水素水を1回飲めば、腸内菌が作り出す大量で持続的な水素よりずっと効く。


 講演した先生方が「放射線ホルミシス効果」に倣って「水素のホルミシス効果」と呼ぶ不思議な効き目です。でも、何故そうなるのか説明できません。そこで今回の学会情報を整理して、筆者なりに「水素パルス仮説」を建ててみました。すると、活性酸素消去作用とはまったく別の、水素の薬理学が見えてきます。




 日本医科大の大澤郁朗教授らは、水素がミトコンドリアを活性化することを発表しました。ピッツバーグ大学の中尾篤典教授らは、水素が転写因子Nrf2を誘導することを発表しました(Nrf2については第109話と第117話を参照)。これらの実験結果を鵜呑みにして描いた上図は、水素パルス投与の効き目を表わしています。もし水素を持続的に投与すると、予防的活性酸素が過剰にできるので、抗酸化酵素はその消去に手間取って、肝心の病理的活性酸素に手が回りません。そうなると元も子もなくなってしまいます。


 とはいえ、この仮説は出来たばかりですから、今後に検証されなければなりません。もし仮説が正しいとなれば、水素水の飲み過ぎは、身体に備わっている自己防衛機能の低下を招きかねません。水素水の効き目は予知できる酸化障害には有効でも、慢性的な酸化障害では安全神話にならないように、更なる検証が必要でしょう。


●ということで、当分の間は水素水よりもコーヒーポリフェノールが安心です。


(第127話 完)


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 日々店頭に立つ薬剤師には「患者説明の豊富なヒント」、製薬会社のMRには「社会学的くすりのエビデンス」、アカデミアの研究者には「目から鱗の研究テーマ」、そして一般消費者には「確かな情報」を提供します。NHKスペシャルで大反響のレスベラトロールなど、ほんの一部に過ぎません。