シリーズ『くすりになったコーヒー』
温泉や銭湯で、湯上りのコーヒー牛乳の人気が続いています。「知らず知らずのうちに水素が出て、火照った体の酸化障害を癒すから」との理屈は成り立つでしょうか?
●腸内菌が作る大量の水素よりも、ほんの少しの水素水の方が効く(詳しくは → こちら )?。
つまり、コーヒー牛乳では効かないというのです。これは変な話です・・・水素水の抗酸化作用を発見した太田成男教授自身でさえ、自らの研究結果に不思議な疑問を抱いているのです。
健康な腸内菌の餌となる牛乳、乳糖、オリゴ糖、難消化性炭水化物(コーヒーも含まれるが未証明)、等々を食べていれば、腸内菌が大量の水素を作ります(前回を参照)。でも、太田教授によれば、それらの食品の抗酸化力は水素水に及ばない・・・というのです。
太田教授は少量の水素水の効果を強調しながらも、「その驚嘆すべき効果は捕えどころがない」と言っています。つまり、水素水の抗酸化作用/抗炎症作用の科学的・医学的な根拠は未だ解っていないのです。
水素水と牛乳の差は歴然としています。
●水素水の水素は、飲むと直ぐに吸収されて、30分で消滅する。
●牛乳を飲むと、1時間後から水素が出はじめて、9時間たっても持続する。
この2つの事実から、水素水と腸内菌の水素とでは、体内分布に差があることがわかります。図で説明しましょう。
水素水の水素は、口から胃の間で吸収されるので、飲んだらすぐに呼気に現われ、30分で消滅してしまいます。これに対して、腸内菌の水素は大腸の範囲で発生し、その範囲からの吸収が、餌を食べ尽くすまで続きます。
更にはっきり言えることは、大腸から吸収された水素は、肝門脈という血管を通って肝臓へ行き・・・次に肺動脈から肺に入ると、呼気に混ざって排泄されます。だから、腸内菌の水素で病気を予防できるとすれば、まず第一に肝炎のような病気だろうと思われます(詳しくは → こちら )。
一方、水素水を飲んだときは、胃で吸収された分は肝臓を通りますが、口から食道の範囲で吸収された分は肝臓へは行かず、頭部と胸部の周辺組織に分布すると思われます。しかし、それでどんな病気が予防できるかと言いましても、まだ何とも言えない状況です。
●水素は吸ってよし、風呂に入れてよし、目薬もよし・・・というように、飲む以外にも色んな使い方がある(詳しくは → こちら )。
何は兎も角、水素水がもし薬であるならば、使い方に応じた「薬物動態(drug disposition)」を調べれば、不思議が解明されるでしょう。そうそう、忘れていましたが、宇宙で一番多い元素は、水素です。太陽エネルギーも水素あっての恵みです。
(第124話 完)
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どちらも同じことを言っています。
言い伝えに耳を貸せば、間違った生活習慣を見直したり、病気を予防する食べものに気を配ったり、儲け本位の怪しい健康食品をボイコットしたり、本当に役立つサプリメントを選んだり、身体にあった大衆薬を買って飲んだり、医者にかかるタイミングを間違えないようになるのです。
日々店頭に立つ薬剤師には「患者説明の豊富なヒント」、製薬会社のMRには「社会学的くすりのエビデンス」、アカデミアの研究者には「目から鱗の研究テーマ」、そして一般消費者には「確かな情報」を提供します。NHKスペシャルで大反響のレスベラトロールなど、ほんの一部に過ぎません。