シリーズ『くすりになったコーヒー』


 第81話に書いたヒドロキシヒドロキノン(HHQ)は、身体のなかで過酸化水素を発生します(詳しくは → こちら


過酸化水素は活性酸素の一種です。量が多くなりますと細胞傷害や慢性炎症を引き起こす心配があります。ですから健康コーヒーを淹れるには、HHQを除去したほうが安心です。


 HHQは焙煎でできてきます。クロロゲン酸が無くなるにつれて、HHQが増えるのです。HHQはインスタントコーヒーにも含まれていますし、レギュラーコーヒーでは焙煎が深いほど多くなりますが、まだ正確なデータはありません。


●HHQは体内で過酸化水素を発生するので、これを除去したコーヒーを飲みたい。


【除去の方法】吸着材でろ過する。


 血圧を下げるクロロゲン酸はHHQがあると無効です。こくの深い美味しいコーヒーにはHHQが入っていますから、血圧を下げる効き目がマスクされています。HHQを除去して健康に良いコーヒーにする方法はないものでしょうか。


 花王食品の特許によれば、活性炭や珪藻土といった吸着材が有効です(第71話を参照)。でも、HHQを完全に除こうとしますと、本来のコーヒーの美味しさが消えてしまいます。これを解決するのは相当難しい話です。


 疫学調査の結果を見ましても、コーヒーを飲んで血圧が下がるという発表はありません。HHQの影響が出ているのです。花王食品の特許商品もまだ市場には出ていません。こんな状況ではありますが、HHQを除くために、家庭でもできる簡単で確実な方法が見つかれば、コーヒーの健康効果は益々向上すると思われます。


●以下は確実とは言えませんが、可能性のある、家庭でもできる比較的安上りの簡便法です。



【HHQ除去方法】


 コーヒーをドリップ式で淹れるとき、抽出液のなかに備長炭(飲料水用)のかけらを入れておく。炭の量は、コーヒー1杯当たり1グラム程度、一かけらです。更に効率を上げるには、備長炭をやや細かく砕いて、袋に入れて浸すことです。時間は数分でよいでしょう。もし活性炭の粉を飲んでしまっても、健康上の問題はありません。


【除去の原理】


 さて、こうして作る“炭入りコーヒー”は何故よいのでしょうか?


 冷蔵庫の“匂い消し活性炭(キムコ)”は吸着力に優れていて、食べものから出る匂いを消してくれます。コーヒーのHHQも同じ原理で活性炭に吸着します。備長炭は活性炭の固まりなので、強い吸着力をもっています。問題は、備長炭がHHQ以外の物質も吸着してしまうことです。ですから備長炭の使い過ぎはコーヒーの旨味を台無しにしてしまいます。


 写真は備長炭とその電子顕微鏡写真(タイニー・カフェテラス支配人さんのHPから)。HHQは備長炭の表面に開いたミクロの穴に吸い込まれて消えるのです。


(第97話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
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