シリーズ『くすりになったコーヒー』


 深く煎ったコーヒーには、アクリルアミドのような強い発癌性物質が含まれていますが、量が少ないので、毎日10杯飲んでも人体への影響はありません(第79話を参照)。そういう物質をわざわざ除去して飲むという必要はないのです。ここでは、除去して飲んだ方がよいという成分と、除去の目的、除去の仕方についてまとめてみます。


●カウエオールとカフェストールは血中脂質を高めるので、除去して飲みたい。


【除去の方法】ペーパードリップで淹れる。


 この2つのテルペン類は、生豆に入っていて、焙煎してもすぐにはなくなりません。テルペン類を含んだコーヒーオイルを飲む実験では、血中コレステロールと中性脂肪が一過性に高くなりました(図を参照)。この結果は、コーヒーをいくら飲んでも高脂血症リスクは下がらないという疫学調査結果と合っています。



 図を見てください。実験結果は実にはっきりしています。1996年にこの論文が発表されるまで、北欧の人々は煮出しコーヒーと言って、やかんで煮込んだコーヒーを飲んでいました。飲む度に弱いながらも図のようなことが起こっていて、心臓病のリスクを高めていたのでしょう。


 ところがこの論文が発表されてから、コーヒーの淹れ方に変化が生まれ、多くの家庭でペーパードリップ式が普及したのだそうです。その結果どうなったかと言いますと、コーヒーを飲んでも心疾患リスクが増えることはなくなりました。


 ペーパードリップと似た方法にネルドリップがあります。この方法ですと、コーヒー油分が抽出されて味がよくなるということです。この油分のなかにカウエオールとかカフェストールが含まれているのかいないのか、まだデータがありません。


【研究者の方へ】コーヒーの淹れ方とテルペン類の関係について、定量的な実験で確かめてください。


(第96話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
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